まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ブラウン・アイド・ガール(Brown Eyed Girl)」ヴァン・モリソン(1967)

 おはようございます。

 さあ、今日も”ガールもの”。しかもポップス市場歴史的大当たりの年”1967年もの”ですから、期待できます。ちなみに、発売当時日本では「茶色い眼をした女の子」と、まんまの邦題がついていました。。。

 ヴァン・モリソンの「ブラウン・アイド・ガール」です。


Van Morrison - Brown Eyed Girl (Audio)

Hey, where did we go?
Days when the rains came
Down in the hollow
Playin' a new game
Laughing and a running, hey, hey
Skipping and a jumping
In the misty morning fog with
Our hearts a thumpin' and you
My brown-eyed girl
You, my brown-eyed girl


Whatever happened
To Tuesday and so slow?
Going down the old mine
With a transistor radio
Standing in the sunlight laughing
Hiding behind a rainbow's wall
Slipping and sliding
All along the waterfall, with you
My brown-eyed girl
You, my brown-eyed girl


Do you remember when we used to sing
Sha-la-la-la-la-la-la-la-la-la-la-te-da
Just like that
Sha-la-la-la-la-la-la-la-la-la-la-te-da-la-te-da


So hard to find my way
Now that I'm all on my own
I saw you just the other day
My, how you have grown
Cast my memory back there, Lord
Sometimes I'm overcome thinking 'bout
Making love in the green grass
Behind the stadium with you
My brown-eyed girl
You, my brown-eyed girl


Do you remember when we used to sing
(Sha-la-la-la-la-la-la-la-la-la-la-te-da)
Lyin' on the green grass
(Sha-la-la-la-la-la-la-la-la-la-la-te-da-la-te-da)
Bit by bit by bit by bit by bit by bit
(Sha-la-la-la-la-la-la-la-la-la-la-te-da-la-te-da)

*****************************************************************

なあ、二人でどこに行ったんだっけ? 

雨が続いたあの日々
谷まで降りていって
新しい遊びをやって
笑って 走って
スキップして ジャンプして
朝もやの中で
僕たちの鼓動は高鳴ったものさ
君は、僕の茶色い瞳の女の子
君は、僕の茶色い瞳の女の子

 

火曜日に何が起こったっけ、退屈だったかい?

トランジスタラジオを聴きながら
古い鉱山まで行って
太陽の下に立って、笑いながら
虹の壁の向こうに隠れて
滝のそばを滑っていったよね、君と
僕の茶色い瞳の女の子
君は僕の茶色い瞳の女の子

 

僕たちが歌っていた頃を覚えているかい?
シャラララ、、、
あんな感じで
シャラララ、、、

 

自分の道を見つけるのはすごく大変さ
今の僕は一人きりだから
ついこの間君を見かけたよ
ああ、すっかり成長したんだね
僕の記憶をあの頃に戻してよ、神様
時々、僕は緑の草の上で愛し合うことを考えずにいられない
君と一緒にスタジアムの裏で
僕の茶色い瞳の女の子
君は僕の茶色い瞳の女の子

 

僕たちが歌っていた頃を覚えているかい?
シャラララ、、、
緑の草の上に横たわって、、、
シャラララ、、、
少しずつ少しずつ
シャラララ、、、             (拙訳)

*****************************************************************

 ヴァン・モリソン北アイルランドベルファスト出身のシンガー・ソングライターです。ロック史に残る偉大なアーティストとして欧米では大変リスペクトされていますが、日本ではなかなか伝わらず現在まで至っているように思えます。日本と海外での認知度の差が大きいアーティストの筆頭格なのかもしれません。

 

 しかも、彼はソウルフルで渋く深みのある音楽を持ち味としていて、本来ポップな音楽をやる人ではないのですが、この「ブラウン・アイド・ガール」だけはポップ・ソングとしてアメリカとイギリスで飛び抜けた人気があります。

 

 アメリカでのこの曲のオンエア回数は1000万回を超え、これは史上10位の記録だといいます。そして、アメリカのデジタル配信においては、1960年代の全ての楽曲の中でダウンロードと再生数が最も多い楽曲といいますから驚きです。21世紀に入ってますます人気が上がっているということなのかもしれません。

 

 僕もこの曲がこれほど人気があるとは思っていなかったのですが、確かに「再会の時」(1983)、「7月4日に生まれて」(1989)、「愛がこわれる時」(1991)など、映画やTVドラマではよく耳にしていました。

 

 また、ブルース・スプリングスティーンU2もライヴでカバーして、ジョージ.Wブッシュやビル・クリントンの愛聴曲でもあるそうです。

 

   遠い恋を思い起こす歌ですから、ブッシュやクリントンのようにアメリカの中高年男性にはグッとくるんでしょうね。

 ネオン・フィルハーモニックの「モーニング・ガール」もそうですが、<ガール>がタイトルにつく曲は、大人になった少女を主人公の男が昔を思い出しながら、ちょっと淋しく見つめる、そんな設定が似合うのかもしれないですね。

 

 ヴァン・モリソンは1964年に”ゼム”というグループでデビューしています。ビートルズストーンズキンクスザ・フーといったイギリスのバンドが大ブームを起こしていた時代ですね。

 

  ゼムの代表曲「グロリア」。もともとシングルのB面でしたが時代とともに高く評価されるようになりました。

www.youtube.com

 

 しかし、1966年に彼はゼムを脱退し、ニューヨークに渡り、ソロとしてレコーディングを行います。

 録音にはスタジオ・ミュージシャンが集められ、ギターはアル・ゴーゴニ、エリック・ゲイル、ヒュー・マクラッケンなんて後のビッグネームがクレジットされています。

 そのうちの1曲がこの「ブラウン・アイド・ガール」でシングル発売されると、見事全米10位のヒットを記録しました。

 

 

 ちなみに、この曲はもともと「ブラウン・スキンド・ガール(Brown Skinned Girl)」というタイトルだったそうです。しかし、レコーディングが終わる頃には「ブラウン・アイド・ガール」に変わったといいます。

 

「ただの間違いだったんだ。あれはジャマイカの歌、カリプソみたいな歌だった」

「うっかり忘れて、タイトルを変えてしまったのさ」

「録音した後、テープの入った箱を見てもタイトルを変えたことに気づかなかったよ。ギターと一緒に置かれた、テープの入った箱には「Brown Eyed Girl」 と書かれていた。」「それが実際に起きたことだったのさ」 

 (Belfast Telegraph  Fri 7 Oct 2011 )

 

 カリプソのリズムの曲だから、褐色の肌の少女。もしそのままのタイトルだったら、この歌は違った道筋を辿ったのは間違いないでしょう。少なくともブッシュの愛聴曲にはならなかったような。。。

 

 本人は、この曲だけが異常に人気があることが納得できないらしく、

「オレの曲で、この曲よりいいのは300曲はあるよ」

 と、あるインタビューで語っていたそうです。

 でも、作った本人が「こんなに売れるとは思わなかった」というケースが圧倒的に多いのが、ポップスの世界の不思議さ、面白さでもあります。

 

 「ブラウン・アイド・ガール」以降のヴァン・モリソンは、現在に至るまで、ほぼブランクなく、精力的に作品を発表し演奏活動を続けています。どんなビッグ・アーティストでも年齢とともに活動がペース・ダウンするのは避けられないと思うのですが、彼だけは例外なようで、凄まじいエネルギーだと思います。

 

 最後は彼の曲の中で僕が最も好きなものを。ロッド・スチュワートのカバーで有名になりましたが、やはり本人の歌唱がベストです。名曲、という言葉しか思い浮かびません。「Have I Told You Lately」(1989年)を。

 

www.youtube.com

 追記:2023年10月。相変わらずパワフルなヴァン・モリソンは、ファッツ・ドミノチャック・ベリーエヴァリー・ブラザーズといったロックンロール最盛期のアーティストの作品を取り上げたアルバム『Accentuate The Positive』のリリースをする予定で、先行シングルでも全く衰えのないヴォーカルを披露しています。

www.youtube.com

 

 

 一時期、ヴァン・モリソンと一緒に活動していたジョージィ・フェイム

popups.hatenablog.com