まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「NO END SUMMER」角松敏生(2012)

 おはようございます。

 今日は角松敏生の「NO END SUMMER」。2012年リリースの「「Rebirth 1」」の収録されていたリメイク・ヴァージョンで。

www.youtube.com

 角松敏生は40年近いキャリアを誇る、日本のCITY POPの大看板アーティスト。

CITY POPの”神の座”に君臨しているのはもちろん山下達郎ですが、アジアのCITY POPファンのアーティスト(Night Tempoなど)のインタビューなどを見ると、彼は達郎以上に支持されている感じもあります。

 

 また、最近再評価されているCITY POPについて彼はこういう卓見を述べています。

「当時の都市生活者のラフスタイルと、それに対して憧れを抱く地方出身者の視点とか、いろいろなものが混交してコンバインされた7色の光を放ったような時期があった、ということ。その時に数々生まれた音楽のことをシティ・ポップというのかもしれないですね。」(「CITY POP シティポップ 1973-2019」)

 

 都会的なきらびやかなものやリゾート感の強く感じさせる作品が多く、外見もやや遊び人風ですが、その内面には強い怨念というか、なにくそ、という反骨心がメラメラと燃えていて、それが常に彼をかきたててきた、そんな印象を僕は受けています。

 21歳、まだ大学生でデビューし、ファースト・アルバムは日本の凄腕ミュージシャン、セカンド・アルバムは海外録音と、プロフェショナルたちの前で、まだ未熟な自分が思うような仕事ができなかったという後悔と屈辱がずっと残っていたということもあったようです。

 

 長いキャリアのあるアーティストたちがこぞって自身のセルフカバーをよくやっていた時期がありましたが、そんな中で、彼のセルフカバー・アルバム「Rebirth1」は、他のアーティストたちとは違う、彼の尋常じゃない”気迫”がこめられているようで驚いたことをおぼえています。本気で過去の録音を超えてやる、という意思が強く伝わってきたのです。

 その中から今日選んだのは「No End Summer」。オリジナルは1985年、TV「なるほど!ザ・ワールド」で使われていました。当時、僕は、山下達郎の「THE THEME FROM BIG WAVE」みたいな曲だなと思った記憶があります。

 当時は、僕もそうだったのですが、彼を”達郎の真似っこ”だと偏見を持って見てしまう人は少なくなかったと思います。

 もちろん、彼は山下達郎の大ファンだったらしく、レコード・デビューの話も達郎と同じ会社からだったので決めたら、社内では競合する別セクションのため達郎と会う機会すらなく、そのためかえって、自分の世代で自分のフィールドを作らなくてはいけないと思った、と後日インタビューで語っています。

 

 彼が達郎フォロワー的な見られ方をされなくなったのは、当時のNY産の最新のR&Bサウンドルーサー・ヴァンドロス、チェンジなど)に舵を切った「GOLD DIGGER~with true love」あたりからでしょうか。

 「NO END SUMMER」もこのアルバムに入っていたのですが、この曲だけ達郎っぽさが強い印象がありました。

 

オリジナル・シングル・ヴァージョン

www.youtube.com

 その後ベストアルバム「1981-1987」でこの曲をリメイクしていて、そのヴァージョンは個人的にはちょっとやりすぎじゃないかと感じてしまいましたが、「Rebirth 1」での再リメイク、これは素晴らしいと思いました。

 やさしく爽やかな曲なのに、細部まで徹底してこだわりぬいて、入念に”気”を込めているかのようなアレンジに、彼の”メラメラした執念”みたいなものを感じてしまいます。そして、そこがまたいいところかなと思います。

 

 個人的には彼のアルバムでは「ON THE CITY SHORE」が一番好きです。

あと、シングルではこのきょくが好きなのですが、当時8cmCDシングルでリリースされたきり、アルバムに収録されていないんですよね。

 

「もう一度・・・and then」

www.youtube.com

 

 

 

 

f:id:KatsumiHori:20210806102923j:plain