おはようございます。
今日はジョン・レノンの「ウーマン」です。
Woman - John Lennon (official music video HD)
” (この空の半分を占める女性たちへ)
女性よ うまく表現できない
浅はかな僕の混乱した想いは
結局のところ、永遠にあなたに借りがあるんだ
そして女性よ なんとか表してみるよ
胸の奥にある想いと感謝の気持ちを
成功の本当の意味を僕に教えてくれたのだから
女性よ あなたはわかっているね
男の中には小さな子供がいることを
僕の人生はあなたの手にあることをどうか忘れないで
そして女性よ あなたの心に近づけるほど抱きしめてほしい
どれほど距離があっても 離れ離れにならないように
つまりは まるであらかじめ星に記されていたような 運命なんだ
女性よ どうか説明させて欲しい
あなたを悲しめたり傷つけるつもりなんて絶対ないことを
だから何度も何度も僕に言わせてほしい
愛している、永遠に 愛している、永遠に、、、 ”(拙訳)
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「バミューダにいた天気のいいある午後に、ふいに浮かんだんだ。女性がぼくらのためにしてくれることが身に沁みた。ヨーコがぼくのためにしてくれていることだけじゃなくね。まあバミューダで考えていたのは個人的な意味合いではあったんだけど、あそこで突然ハッとしたのは、自分が当たり前だと思っていたすべてのことについてだった。この曲の頭でぼくがささやいているように、女性というのはまさに空の半分を占めている存在だ。その考えが洪水のようにぼくに押し寄せて、それを表現した。ビートルズの曲を思わせるサウンドだけど、わざとじゃない。大昔に「ガール」をやったときみたいにやったんだ。だからこの曲は「ガール」の大人版だ。」
(「メイキング・オブ・ダブル・ファンタジー ジョン・レノン最後のメッセージ」」
昨日このブログでピックアップした「夢の夢(#9 Dream)」が収録されているアルバム「心の壁、愛の橋」をリリースした翌年、息子のショーンが生まれたことで彼が5歳になるまではずっと一緒に過ごすと決めたジョンは、あえて音楽の世界から遠ざかっていました。
そして、ショーンが5歳になる1980年、ふたりでバミューダに滞在していた時(オノ・ヨーコはニューヨークにいました)に、彼にふと曲のインスピレーションが湧いて、久しぶりに楽曲を制作しようということになり生まれたのがアルバム「ダブル・ファンタジー」でした。そしてアルバムに収録されていてシングルにもなったこの「ウーマン」もバミューダで着想されたものだったのです。
さて、僕がまずこの曲で気になったのは冒頭のナレーション、
”For the other half of the sky”という言葉です。上記のインタビューで「女性というのはまさに空の半分を占めている存在だ」と彼は語っていましたので、僕は「この空の半分を占める女性たちへ」と訳しましたが、空の半分?とその言い回しに少ししっくりこない感じがありました。
調べてみると、これは毛沢東の「婦女能頂半辺天(天の半分は女性が支える)」という言葉からきていて、英語では「women hold up half the sky」と訳されているそうです。男女平等を唱える時に引用される機会の多い有名な言葉のようです。
しかしこれは、中国の文化大革命の際に毛沢東が女性の社会進出を促進するために発した言葉らしく、人道的な男女平等を訴えるものというよりは、女性にもっと社会的労働に参加させ国力を上げようということが意図されていたものだったようです。
ごく最近では、先月アメリカ民主党の大統領候補バイデン氏が、副大統領候補に女性のカマラ・ハリス氏を選んだ理由を説明する際に、この”women hold up half the sky”を引用したそうで、その引用元が中国の毛沢東だったことから一部物議を醸したようです。
当然、ジョンにはこの言葉が本来政治的なものだという意識はなく、バミューダの空を見上げて、穏やかな心境の中で女性のことを純粋に思ったのでしょう(あくまでも推測ですが、、)。
話がそれてしまいましたが、ジョンの言うSkyの大元は”空”ではなく”天”だったわけです。
”天”はただ”見上げる空”の意味じゃなく、神様と意味が重なっているものだということは日本人にも理解できると思います。
毛沢東の言葉は、神様が与えてくださったこの世界の半分は女性が支えている、ということなのかもしれません。
Skyにも”天国”のニュアンスもありますから、英語圏の人にも単に”見上げた空の半分”という文字通りの意味では受け取っていないのかもしれません。
天をSkyと訳し、今度はSkyを空と訳したなかで、それぞれの言葉が微妙に違うことから、僕の感じた違和感が生じたのかもしれません。
個人的な愛情ではなく、女性全体へのリスペクトと感謝、というのはなかなか歌にできないですし、ともすれな嘘臭くなったり卑屈なものになったりしそうです。「ウーマン」みたいな曲は他の誰もかけないと思いますし、この時のジョン・レノンの作品から感じる精神的な平穏さと純度の高さには、他のどのアーティストもたどりついたことのないもののように僕には思えます。
最後にジョンが「ウーマン」との比較で引き合いに出した、ビートルズの「ガール」を。こちらは女の子に翻弄される悩める男子の歌です。