まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲を選曲しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「心の愛(I Just Called to Say I Love You)」スティーヴィー・ワンダー(1984)

 おはようございます。

 今日は、元々はブレッド&バターのための曲だった、スティーヴィー・ワンダーの「心の愛」です。


Stevie Wonder I Just Called To Say I Love You

 

 "  おめでたい元旦でもないし

    バレンタインに贈るチョコで包まれた

  キャンディ・ハーツ(ハート型の砂糖菓子)でもない

  春の始まりの日でもないし、歌う歌もない

  実際 ただのありふれた日でしかないんだ

  

        四月の雨でもないし 満開の花でもない

        結婚式のある六月の土曜日でもない

  だけど それは何かといえば

  君に言わなければならない3文字の言葉でできた

  本当の気持ちさ

 

  ただ君に”I Love You "と言いたくて電話したんだ

  ただ君をどんなに思っているのかを伝えたかったんだ

  ただ君に”I Love You "と言いたくて電話したんだ

  そしてそれは、僕の心の底から思っていることなんだよ

 

  夏の真っ盛りでもない

  暖かな七月でもない

  やさしい8月の夜を照らすハーベスト・ムーンでもない

  紅葉でもないし 落ち葉でもない

  鳥たちが南の空に飛び立ってゆく時期でさえない

 

  天秤座に入った太陽でもなく

  ハロウィーンでもなく

  君がクリスマスの喜びを運んでくれることに感謝する日でもない

  だけど それは 使い古されているけど とても新しいこと

  その3文字の言葉(I Love You)で今までとは違う形で

        君の心を満たすんだ

 

  

        ただ君に”I Love You "と言いたくて電話したんだ

  ただ君をどんなに思っているのかを伝えたかったんだ

  ただ君に”I Love You "と言いたくて電話したんだ

  そしてそれは、僕の心の底から思っていることなんだよ” (拙訳)

 

 

  元旦から始まって、十二ヶ月それぞれのトピックが歌詞に入っています。

 なぜ、そんな凝ったことをしているかというと、”I Love You”というシンプルで、ある意味”使い古された”言葉を、相手の心に”新鮮に”かつ真実味を持って響かせるためなんですね。

 一年の中にある”特別なもの”を順番にあげて”それじゃない”と一個一個消していって、最後に残ったのが、ありふれてはいるけれど何よりも真実な”I Love You"だという構成になっているわけです。

 絵で例えるなら、季節感のある色鮮やかな背景を描いては塗りつぶすことを繰り返していくと最後に”I Love You"という言葉だけが浮きあがる、そんなイメージでしょうか?

 

 何かを際立たせるのは、そのもの自体を目立たせるだけじゃなく、まわりを消してゆくという方法も、確かにあるよなあ、と僕は思いました。

 

 

 さて、僕がこの曲を初めて聴いた時、わかりやすく優しいいい曲だとは思いましたが、ティーヴィーも80年代型ポップスに合わせちゃったのか、、と正直思いました。

(ただし、この曲が収録されたアルバム「ウーマン・イン・レッド」自体はすごく好きでした)

 1970年代の”神がかり的な”彼の作品に圧倒された経験がある人間は、結構そう思ったんじゃないでしょうか。

 

 しかし、調べてみるとこの曲は、1979年に日本のブレッド&バターのために贈られたもので、着想自体は1976年の7月、あの大傑作「キー・オブ・ライフ」を作り終えた直後に浮かんだ曲だったそうです。

 

 

 そして、彼はこの曲の成り立ちを、詳細に具体的な形で公にしなければいけなくなりました。その理由は”盗作”で訴えられたからでした。

 

 無名の作家がこの曲は俺が昔書いたものにそっくりだと”妄想的難クセ”をつけるパターンはよく耳にしますが、スティーヴィーの場合、訴えた二人の作家のうち一人は、一緒に曲を書いたことのある人物でした。

 それがリー・ギャレット。スティーヴィーの初期の大ヒット、この曲でも彼は共作しています。


Stevie Wonder- Signed, Sealed, Delivered, I'm Yours

 またスティーヴィーが他のアーティストに提供したこの2曲でも共作しています。

(どっちも僕が本当に大好きな曲です。)


It's A Shame


Jermaine Jackson - Let's Get Serious

 昔からの知り合いから訴えられるということは、相当ショックなことだったでしょう。

 訴えたもう一人は、リー・ギャレットとの共作が世に出たことのあるロイド・チエイト。

 リーとロイドが曲作りに加わったのはこんな曲があります。これもまた、僕は大好な曲でした、、


Eddie Money- Maybe i'm a fool

  リーとロイドは、彼らが作った「Hello It's Me/I Just Called to Say」という曲を1976年にスティーヴィーに聴かせたことがあって、タイトルとサビはそこからの盗用だと訴えたのです。

 訴えは1985年に起こされましたが、スティーヴィーの古くからの友人でもあったリーは翌年に裁判から降り、結局スティーヴィー側に立って証言したそうです。

 最終的にはロイドとの裁判になり、1990年に結審します。

 最後は、スティーヴィー、ロイド両方の当時のデモテープを陪審員は聴き比べて決めたようです。

 スティーヴィーが提出したのは、当時ブレッド&バターに送ったもので、アメリカ大使館から彼らに問い合わせがあった彼らが提出したとのことです。

 陪審員は、メロディーに関しては似ているところはない、”I Just Called to Say I Love You”という言葉も、誰かのコピーだと認定できるほどユニークなものではない、としてロイドの訴えを退けました。

 スティーヴィーはこの訴訟で名誉が傷つけられたとして、最初は逆提訴も考えたそうですが、結局、後日リーとロイドに対して、もしよければ、チャリティとして一緒に曲を作らないか?と和解を申し出たそうです。

 

 ともかく、ブレッド&バターが提出したデモ・テープが結審を左右したわけですね。

 そして、彼らはスティーヴィーがリリースした同年末にこの曲をリリースします。

 本来この曲を贈られていた彼らが、カバーという形になったんですね。


bread & butter - i just called to say i love you

 

 そして、彼らへの感謝として、あらためて書き下ろし曲がスティーヴィーから贈られました。「Remenber My Love」という曲で、1986年にリリースされています。


【珍品堂】Bread&Butter - remember my love

 

 

 

 

ゴールデン☆ベスト ブレッド&バター

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  • アーティスト:BREAD&BUTTER
  • 発売日: 2005/04/20
  • メディア: CD