まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「フール・ストップ・ザ・レイン(Who'll Stop The Rain)」クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル(1970)

 おはようございます。

 今日はCCRことクリーデンス・クリア・ウォーター・リヴァイヴァルの「フール・ストップ・ザ・レイン」を。


Who'll Stop The Rain

 

Long as I remember, the rain been coming down
Clouds of mystery pouring, confusion on the ground
Good men through the ages, trying to find the sun


And I wonder, still I wonder
Who'll stop the rain


I went down Virginia, seeking shelter from the storm
Caught up in the fable, I watched the tower grow
Five year plans and new deals, wrapped in golden chains


And I wonder, still I wonder
Who'll stop the rain


Heard the singers playing, how we cheered for more
The crowd had rushed together, trying to keep warm
Still the rain kept pouring, falling on my ears


And I wonder, still I wonder
Who'll stop the rain

 

  ”オレがおぼえている限りずっと この雨は降り続いてる

 不可解な雲が地上に混乱を吐き出している

 代々、善人たちは 太陽を見つけようとしてきた

 それでオレは、ずっと不思議に思ってるんだ

 誰がこの雨を止めるのかって

 

 嵐から逃れるシェルターを探して ヴァージニアに行った

   よくできた作り話を聞かされて 高い建物が建設されるのを見たんだ

    金ピカの鎖に巻かれた 五年計画やら新しい経済政策やら

 それでオレは思うんだ、ずっと不思議に思ってるんだ

 誰がこの雨を止めるのかって

 

  シンガーたちの演奏を聴いて どれだけデカい歓声をあげただろう

  観客たちは、体を温くするために みんな押し寄せてきた

 まだ雨は降り続いて オレの耳にも落ちてくる

 それでオレは思う、ずっと不思議なんだ

  誰がこの雨を止めるのかって          ”   (拙訳)

 

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” Who'll Stop The Reign(この支配を誰が止めるんだ)”という意味もこめられた歌

 

 

 クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルは1967年から1972年まで活動したアメリカ西海岸のロック・バンドです。

 サイケデリック・ロックが全盛の西海岸で、泥臭くかつ明快なロックンロールを歌いまさに異彩を放つ存在でした。ソングライティングと歌の両方で卓越した才能を見せるジョン・フォガティが中心になっています。

 

 日本では CMソングにもなった「雨を見たかい(Have You Ever Seen The Rain)」(1971)が一番有名だと思いますが、


www.youtube.com

 

彼らの代表曲にはもう一つの雨の歌があって、それがこの「フール・ストップ・ザ・レイン」です。

 

   1960年代後半の若者文化を象徴する野外イベントとして伝説化している”ウッドストック”に彼らも出演しています。

   雨にたたられたことでも知られていますが、ジョン・フォガティはステージ上から雨で泥だらけになった何十万人もの観客が、みな一斉に服を脱ぎ捨てていった光景が目に焼き付いていたそうで、コンサートが終わり家に戻ってこの曲を書き始めたそうです。

   3番の歌詞にその光景が反映されていますね。

 

 ”ヒッピー”と呼ばれていた、「ウッドストック」に参加したような当時の若者の多くは、ベトナム戦争に反対し、ニクソン大統領の政治に強い異議を唱え、行動を起こしていました。

 

 ジョンも以前から反戦や反ニクソンを歌に反映させていました(例えば「フォーチュネイト・サン」という曲では、大統領万歳なんて言っている無邪気な愛国心を持ってる金持ちや議員がお前を戦地に送り込むんだ、オレはそんな恵まれた生まれのガキじゃない、と歌っています)

 

 この「フール・ストップ・ザ・レイン」でも、その彼の考えは反映されています。

ジョンもこの歌はワシントン(政府)について書いた、と語っています。

 

 雨=rain と同じ音の 支配、統治=reignを、かけて合わせた歌詞になっているわけです。

 

 歌の1番は、実際に降る雨をイメージさせながら、世界に悪いことが続いていることを暗示させていますが、

 2番になると、”〜計画”とかうまい話をでっち上げて、その裏は金にまみれた癒着だらけのニクソンの政策を皮肉って、完全にrainじゃなくreignのほうを歌っているんですね。

   そして、3番の歌詞に行くと、そこでいきなりコンサートの光景になるので、唐突な気もしますが、これは”ウッドストック”の光景だという共通認識があることで成立するわけです。

 このイベントは、反戦、反ニクソンを象徴するものだったわけですから、実際に降る雨にこの悪政(reign)を誰が止めてくれるんだという思いが、見事に交差するわけです。

 

 ジョン・フォガティという人は、実に優れたソングライターだと言えます。

 曲調やサウンドはいたってシンプルでいながら、歌詞の方はダイレクトな表現をさけ、巧みに比喩などを織り交ぜています。

 

 彼らをリスペクトするアーティストが多いのもうなづけます。

 

 最後に彼らをリスペクトするアーティストの中のひとりのカバー・ヴァージョンを。 実は僕はこの曲を、ブルース・スプリングスティーンのライヴ・レパートリーとして先に知りました、、。

 


Bruce Springsteen - Who´ll stop the rain - Nassau Colisseum, NY, 12/29/80

 

 

 

 

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