まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「雨を見たかい(Have You Ever Seen the Rain?)」クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル(1970)

 おはようございます。

今日もCCRで「雨を見たかい」を。


Creedence Clearwater Revival: Have You Ever Seen The Rain?

 

 ”誰かが昔言っていた 嵐の前に静けさがあると

     わかるよ さっきからやってきているからね

  そしてそれが止むと また言うのさ

  晴れた日に雨は降ると

     知ってるよ 水のように輝きながら降るんだ

 

  オレは知りたい そういう雨を見たことあるかい?

  オレは知りたいんだ そういう雨を見たことあるかい?

  晴れた日に落ちてくる雨を

 

     昨日だって その前も何日も

     太陽は冷たく 雨は激しい 

    そうなんだ オレの人生はずっとそうさ

  永遠に、それは続いていく

  ぐるぐるまわるように 速くなったり遅くなったりするだけ

  わかってるさ それは誰にも止められないんだろう

  
 

  オレは知りたい そういう雨を見たことあるかい?

  オレは知りたいんだ そういう雨を見たことあるかい?

  晴れた日に落ちてくる雨を           ”(拙訳)



  昨日取り上げた「フール・ストップ・ザ・レイン」の”レイン”は雨の”rain”と支配・統治の"reign"を意図的に掛け合わせた歌詞でした。

 この「雨を見たかい」の”レイン”もベトナム戦争で使用されたナパーム弾、空から雨のように降ってくる爆弾の例えだ、という説があって、ある程度広まったもののようです。

 

 政治色の強い「フール・ストップ・ザ・レイン」のちょうど1年後のシングルですし、相変わらずベトナム戦争は混迷していました。そういう見方で歌詞を読んでみても、十分辻褄が合い説得力もあります。

 

 しかし、作者のジョン・フォガティ自身は、雨は彼らの地元サンフランシスコでよく見られる天気雨のことで、バンドの崩壊を歌ったものだと、語っているようです。

 成功の頂点にいるのに、幸福感はなくメンバー間はギクシャクしていくばかり。そしてその時期に、メンバーでジョンの兄であるトムが突然バンドを脱退を発表する、そんな状況です。ジョンにとっては身に迫った切実な問題でした。

 この歌に出てくる晴れた日の雨というのは、本来幸せであるべき時期に不幸な出来事に出会う、ということなのだとジョンは語っているわけです。

 

 ジョンの発言を受けて、ネットでは”ベトナム戦争”説は曲解だとするスタンスの記事が多いようですが、いや、やはり”ベトナム戦争”を暗喩する意図はあるはずだという方もいらっしゃいます。

 

 そこで興味深かったのが2番の歌詞

 ”Yesterday and days before Sun is cold and rain is hard”のところ

  ”Sun is cold and rain is hot”が正しいとする説があることです。rainがhotというのは

まさに、rainが爆弾の比喩だからだ、ということになります。

 海外のサイトでrain is hotが正しいと書いてあるところもありましたが、ほとんどの歌詞サイトがhardですし、いろんなシンガーが歌うのを聴くとhardと歌っていました。

オリジナルのジョンの歌唱は、これがどっちにもとれる感じなのですが、、その後の彼のライヴ映像などを見るとhardで歌っています。ちなみに、日本で当時出たシングルの歌詞カード上でもhardでした。

 

 

 彼がこの曲を書いた時に、ベトナム戦争のことが全く念頭になかったかどうかはもちろん僕にはわかりません。

 

 これだけは言えるのは、「雨を見たかい」を反戦の歌としてとらえられることは彼の本意じゃなかったということです。

 

 政治色の強い「フール・ストップ・ザ・レイン」ですら彼は、ダイレクトな物言いをせずに巧みに喩えを織り交ぜながら歌にしていました。ソング・ライティングに大変優れた才能を持つ彼ですから、歌詞のメッセージだけを取り出すのではなく、ポップ・ソングとして、作品全体として大衆に訴えたいというのが本望なのでしょう。

 

 この曲と同時期に出た「イマジン」も「ホワッツ・ゴーインオン」も反戦のメッセージを持った曲ですが、そのメッセージだけが優れているわけじゃなく、まずとても優れたポップ・ソングであること、それが第一なのだと思います。

 そして、そこに深いメッセージが見事に込められているから名曲になったのだと。その逆はあり得ません。メッセージだけが優れていても、曲として優れていなければ、時代を超えて残ることはないはずです

 

 聴く人がそれぞれのいろんな解釈で楽しむのが、ポップ・ソングのあり方であり醍醐味だと思います。

 楽曲は発表されるとともに、作り手のものから聴き手のものへと変わります。そして、大ヒット曲やスタンダード曲というのは、作者の意図など関係なしに、まさに人々が自分の都合のいいようにいろんな受け取り方をして人生に取り込んでいるものだといえます。

 

 2012年のライヴのMCでジョン・フォガティはこう言っていたそうです

「この曲はもともと僕の人生で起こったとても悲しいことについて書かれたものだった。でも今はまったく悲しくはならない。それは娘のケルシーを思い出させてくれるから。いつもこの曲を歌うときはケルシーと虹のことを思い浮かべているんだ」 

 

 「雨を見たかい」は、作った本人にとっても、当初の作った意図を超えてしまったものになったということなのでしょう。