まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲を選曲しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「Kiss Me」シックス・ペンス・ナン・ザ・リッチャー(1998)

 おはようございます。

 今日はシックス・ペンス・ナン・ザ・リッチャー。日本でもTVやラジオでよく耳にした大ヒット曲です。


Sixpence None The Richer - Kiss Me (Official HQ)

 彼らはクリスチャンのグループ。ボーカルのリー・ナッシュと、ギターとソングライティングを手がけるマット・スローカムがキリスト教の修養会で出会ったことがきっかけになっています。

 バンド名も『ナルニア国物語」の著者で熱心なキリスト教の伝道者でもあったC・S・ルイスの『キリスト教の精髄』という著作に書かれている話からとられました。『キリスト教の精髄』は、ルイスがラジオ番組でキリスト教の本質をわかりやすく語りかけたものを本にまとめたもののようです。その中の例え話に"6ペンス"が出てきます。

 幼い子供から自分ためのプレゼントを買うために6ペンスほしいと言われた父親が、子供が買ってきたプレゼントにすごく喜んだのですが、そのことによって父親はたった6ペンス分の得をしたということではない、ことに気づくという話です。それをルイスはキリスト教における神と人との関係に例えたのだということです。

 

 カントリーのメッカ、テキサス州で生まれ育ったリーはやはりカントリー・ミュージックを聴き育ったようで(他にメキシコ音楽のマリアッチも)、12歳から自ら演奏し歌うようになったそうです。他にメキシコ音楽のマリアッチも好きだったようです

 そして1994年にインディーズからアルバムをリリース。1997年リリースの三枚目のアルバムにこの「Kiss Me」は収録されています。

 そして翌1998年にシングルとしてリリースされますが、3ヶ月後にアメリカの人気青春TVドラマ「ドーソンズ・クリーク」に、翌99年には青春映画「シーズ・オール・ザット」に使われ、一気にティーンエイジャーから大人気の曲になります。

 僕はリアルタイムで見ていなかったのですが、この時期はちょうど青春ドラマが少なかった時期らしく、それだけ注目が集まりやすかったのでしょう。

 ちなみにテイラー・スウィフトが始めてギターで覚えた曲がこの「Kiss Me」だったそうで、この当時アメリカで”アコギ女子”がたくさん生まれたのかもしれません。

 

 「Kiss Me」は日本人が好きな”ネオ・アコ””ギター・ポップ”系の曲ですが、彼らのアルバムを聴いていくと、他はもっと落ち着いたアーティスティックな曲が並び、「KIss Me」が異色だったことがわかります。本質は、良質で地道なスタイルのバンドだったのだと思います。

 

 しかし、この予想外の大ブレイクで、彼らはまさに嵐の中に巻き込まれ、とうとうバンド活動を停止せざるを得なくなります。

 その当時のことは、ただただ飛行機にばかり乗っていた記憶として残っていると言っていたリーですが、そのヒットのおかげで自分は長く音楽活動ができているのだから感謝しかないとも語っています。

 

 あと、日本人には「Kiss Me」は(その当時の)今風の若者のラブ・ソングっぽく聴こえルカと思いますが、歌詞を見てみるとかなり詩的です。

 この曲を書いたマット・スローカムは詩を愛好していたようで、W.H.オーデンやディラン・トマスといった昔の詩人に影響受けていて、「Kiss Me」を書いたときはディラン・トマスを読んでいたようです。

 クリスチャンでカントリー・ミュージックと古い詩を音楽に反映させるという、ある意味トレンドから遠く離れたスタイルの彼らが、最新のヒット・アーティストになったわけですから不思議なものです。

 流行している音楽とは異なった彼らが、当時主流じゃなかった青春ドラマでブレイクしたというのは、世の中に本当はニーズがあったのに満たされていなかった場所があって、そこにピタッとはまったということなんでしょうね。 

 

↓日本でも大人気だったこの曲、日本のレーベルからのリクエストで日本語ヴァージョンも作っています。


Sixpence None The Richer [Japanese]

 

リーはソロ・シンガーとしても活動していますが、バンドでは今の所2012年のアルバムが最新の作品になっています。

 


Sixpence None the Richer - Sooner Than Later