まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ホワット・アー・ユー・ドゥーイング・ニュー・イヤーズ・イヴ?(What Are You Doing New Year's Eve?)」カーペンターズ(1984)

  おはようございます。

   さて、いよいよ大晦日です。

 今日選んだのは、”あなたは大晦日に何してますか?”という歌。カーペンターズの「ホワット・ユー・ドゥーイング・ニュー・イヤーズ・イヴ?」です。


What Are You Doing New Year's Eve

 

When the bells all ring and the horns all blow
And the couples we know are fondly kissing
Will I be with you or will I be among the missing?

Maybe it's much too early in the game
Ah, but I thought I'd ask you just the same
What are you doing New Year's, New Year's Eve?

Wonder whose arms will hold you good and tight
When it's exactly twelve o'clock that night
Welcoming in the New Year, New Year's Eve

Maybe I'm crazy to suppose
I'd ever be the one you chose
Out of the thousand invitations you received

Ah, but in case I stand one little chance
Here comes the jackpot question in advance
What are you doing New Year's, New Year's Eve?
Oh, what are you doing New Year's, New Year's Eve?

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 ”一斉にベルが鳴り響き、ラッパが吹かれると

  私たちの知り合いのカップルはやさしくキスをする

     私はあなたと一緒かしら それとも相手のいない人のひとりかしら

 

 これがゲームだとしたらあまりに早すぎるかも

 ああ、だけどどうせ同じことをあなたに聞いてしまうはず

 ”今年の、大晦日は何をしているの?”

 

 ちょうど夜の12時になったとき

 誰の腕があなたを優しく強く抱きしめているんだろう

 大晦日の、新年を迎える瞬間に

 

 たぶん私はおかしいのよ

 数えきれない誘いの中から

 あなたが私を選ぶと思うなんて

 

 ああ、だけどちょっとでも可能性があったなら

 前もって思い切り賭けにでてたずねるわ

 ”今年の、大晦日は何をしているの?”  

 ”今年の、大晦日は何をしているの?”    (拙訳)

 

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「ホワット・アー・ユー・ドゥーイング・ニュー・イヤーズ・イヴ?」の楽譜はこちら

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 アメリカでは大晦日はパーティをやって、カウントダウンで盛り上がるみたいですね。  そしてカップルは新年になった瞬間にキスをする。それで、この歌のように、大晦日(ニュー・イヤーズ・イヴ)には好きな人と過ごしたいという設定が昔からあるんでしょうね。

 

 なので、もちろんこの曲はただ大晦日の予定を聞いているわけではなくて、好きな人と一緒に過ごしたくて可能性は低いけれど思い切って尋ねてみよう、という奥ゆかしい気持ち(?)を歌っています。

 

  作者は、このブログでも取り上げましたが、近年ハラスメント騒動(?)のターゲットにもなった「ベイビー、外は寒いよ(Baby,It's Cold Outside)」を書いたフランク・レッサーです。

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 彼はハリウッド(映画音楽)でキャリアを積み、最終的には「ガイズ・アンド・ドールズ」などブロードウェイ(ミュージカル)で大成功を手にした人なので、曲も”舞台設定”をしっかりして、そこからストーリーや心情を動かすようなソングライティングをしているように思いますが、この曲は特に映画やミュージカルのために書かれたものではないそうです。

 (ちなみに「Baby It's Cold Outside」ももともと、自分のパーティで夫婦で歌うために書いたものでした)

 しかも、クリスマス・シーズンの定番になっているこの「ホワット・アー・ユー・ドゥーイング・ニュー・イヤーズ・イヴ?」は実は年末の設定ではなかったんです。

 

「レッサーの娘スーザンは、父親の伝記『A Most Remarkable Fella: Frank Loesser And The Guys And Dolls In His Life』の中で、この曲は実際には早春が舞台であると書いている。「恋に夢中になっている、その歌い手は、はるか先の未来に(おそらく軽率な)約束をしている......。この歌が休日に歌われると、いつも父を悩ませていた」

(Financial Times  DECEMBER 27 2021)

 

 春先に恋に落ちたばかりの主人公が、気持ちだけ先走って、大晦日はどうしているの?と相手をたずねる妄想をしている、そこがこの歌の面白味なのに、世間ではクリスマス・シーズンに恋人たちがストレートに打ち明けるような曲だと解釈され、作者のレッサーはその度に失望していたわけですね。

 

 ちなみに、この曲を最初にレコーディングしたのは、マーガレット・ホワイトニングー。様々な楽団のリード・シンガーとして活躍したのち、ソロに転向、ラジオやテレビでも活躍し、アメリカでは「ジュークボックスの女王」と呼ばれるほど大変人気のあったシンガーです。


Margaret Whiting - What Are You Doing New Years Eve - 1947

 彼女は「グッド・モーニング・ミスター・エコー」という、”エコー”をたくみに取り入れた曲が昔、日本のラジオ番組のテーマ曲として使われていたらしく、雪村いずみ細野晴臣コシミハルがカバーしています。


Good Morning, Mr. Echo (1951) - Margaret Whiting

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 また彼女は「Baby,It's Cold Outside」も映画が公開されるといち早くカバーしましたが、デュエットの相手は「ムーン・リバー」などを手がけた大作詞家、ジョニー・マーサーでした。彼はシンガーとしても活躍していた人なんですね。

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   この曲は、エラ・フィッツジェラルドダイアナ・クラール、ハリー・コニックJRなど、やはりジャズのアーティストが好んで取り上げています。それから、ロッド・スチュワートエラ・フィッツジェラルドの音源を使ってバーチャル・デュエットを制作していました。

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 さて、このカーペンターズのヴァージョンは1984年に発売された「オールド・ファッションド・クリスマス」に収録されていました。このアルバムは1978年にリリースされた「クリスマス・ポートレート」のアウトテイクを中心にセレクトされたもので、カレン・カーペンターが亡くなった翌年に発売されました。

 

 内向的な女性が、叶わなさそうな恋を切なく想う、そんな設定の歌を歌わせたらカレン・カーペンターにかなう歌手はいない、僕はそんなふうに思っているので、この曲はまさに彼女にぴったりだと思います。

 

 他にカバーは女性ジャズ・シンガーのものが多いですが、そのなかで僕が好きなのは、昨年の12月に亡くなってしまったナンシー・ウィルソンのヴァージョン。彼女がまだ20代の時の録音です。


Nancy Wilson - What Are You Doing New Year's Eve

 

 そして、最後に僕が選んだのは、イントロに「蛍の光」をさりげなく入れた、アメリカの名ドゥ・ワップ・グループ、ジ・オリオールズのヴァージョン。1949年にリリースされたもので、実はこの曲を一番最初にヒットさせたのが彼らでした。


Orioles What Are You Doing New Year's Eve 1950

  

 

 

 

 

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