まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ダンシング・クイーン(Dancing Queen)」アバ(1976)

 おはようございます。

 今日はアバの「ダンシング・クイーン」です。


Abba - Dancing Queen (Official Video)

 

  ”あなたも踊れるわ    音楽にあわせて

         人生を楽しみながら

    あの娘を見て あの光景を

    ダンシング・クイーンでキメてるわ

 

     金曜の夜 明かりは落ちて

          どこに出かけよう

     いい音楽がかかって盛り上がっていて

          キングを探しに行ける場所

   誰だってキングの候補

   夜は始まったばかり 音楽は盛り上がってゆく

   ちょっとロックがかかるだけで なにもかもが最高

   あなたも踊りたい気持ちが高まって

   チャンスをつかんだら

   

   あなたはダンシング・クイーン

   若くてスウィート、まだ17歳

   ダンシング・クイーン

   タンバリンのビート感じて

 

   あなたも踊れるわ    音楽にあわせて

           人生を楽しみながら

      あの娘を見て あの光景を

      まるでダンシング・クイーン

 

   あなたは意地悪ね みんなをその気にさせて

   気持ちを燃え上がらせたまま どこかに行ってしまう

   他の相手を探そう 誰かいるわ

   あなたも踊りたい気持ちが高まって

   チャンスをつかんだら

 

   あなたはダンシング・クイーン

   若くてスウィート、まだ17歳

   ダンシング・クイーン

   タンバリンのビート感じて

 

   あなたも踊れるわ    音楽にあわせて

           人生を楽しみながら

      あの娘を見て あの光景を

      まるでダンシング・クイーン  ” (拙訳)

   

   

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You can dance
You can jive
Having the time of your life
Ooh, see that girl
Watch that scene
Dig in the dancing queen

Friday night and the lights are low
Looking out for a place to go
Where they play the right music
Getting in the swing
You come to look for a king
Anybody could be that guy
Night is young and the music's high
With a bit of rock music
Everything is fine
You're in the mood for a dance
And when you get the chance

You are the dancing queen
Young and sweet
Only seventeen
Dancing queen
Feel the beat from the tambourine, oh yeah
You can dance
You can jive
Having the time of your life
Ooh, see that girl
Watch that scene
Dig in the dancing queen

You're a teaser, you turn 'em on
Leave 'em burning and then you're gone
Looking out for another
Anyone will do
You're in the mood for a dance
And when you get the chance

You are the dancing queen
Young and sweet
Only seventeen
Dancing queen
Feel the beat from the tambourine, oh yeah
You can dance
You can jive
Having the time of your life
Ooh, see that girl
Watch that scene
Dig in the dancing queen
Dig in the dancing queen

 

Writer/s: Benny Goran Bror Andersson, Bjoern K. Ulvaeus, Stig Anderson

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  アバ(ABBA)はメンバーのアグネッタ・フォルツコグ  、ベニー・アンダーソンビョルン・ウルヴァ―ス、 アンニ=フリッド・リングスタッド 4人のそれぞれの頭文字をつなぎ合わせた名前です。    

 そして、グループが売れていた頃は、アグネッタとビヨルン、ベニーとアンニ=フリッド(フリーダ)が夫婦でした。

 

 アバのソングライターである男性二人、ベニーとビヨルンがまず出会い、一緒に曲を作り始めたことが始まりでした。

 そしてベニーとビヨルンは日本だけでヒットを飛ばしています。「木枯らしの少女(She's My Kind of Girl)」という曲で、もともと1970年に映画のために書いた曲でしたが、1972年にたぶん日本のレコード会社の”仕掛け”で、オリコン最高6位、18.8万枚という大ヒットを記録しています。

 当時の主流だったフォーク・ロック系サウンドですが、すでにアバの特徴であるキャッチーさと叙情感の両方がしっかり出ていると思います。


ビョルン&ベニー Bjorn & Benny/木枯しの少女 She's My Kind Of Girl (1972年)

 その年にはビョルン&ベニーは「サンタ・ローザ」という曲で日本の世界歌謡祭に参加、そのときすでにアグネタとアンニ=フリードと出会っていて彼女たちも一緒に来日していたそうです。

 そして、彼女たちも加わり<ビョルン&ベニー、アグネタ&アンニ=フリッド>というグループになりますが、日本では相変わらず<ビョルン&ベニー>のままで発売されていました。写真はどう見ても4人いますし、名前の英語表記は4人なのに、、。

 そして邦題は、”少女シリーズ”を展開していたんですね。それだけ、「木枯らしの少女」がおいしかったんですね。

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 そして<ビョルン&ベニー、アグネタ&アンニ=フリッド>が長くて、マネージャーのスティッグ・アンダーソンが何かのタイミングで略してABBAと書いたことから、それがグループ名になり、1974年にユーロビジョン・ソング・コンテストでグランプリになった「恋のウォータールー(Walterloo)」が全米6位、全英1位など全世界で大ヒットします。


ABBA / WATERLOO 「恋のウォータールー」

 動画に写っているシングル・ジャケットを見ればわかるのですが、日本だけアーティスト名が「ABBA」じゃなく、まだ「ビョルン&ベニー」のままなんです。アバ、のほうがおぼえやすいし、歌も女性2人が完全に主役になっているのに、です。

 同じ年に「落ち葉のメロディ(HASTA MANANA)」という曲もスマッシュ・ヒットします。


アバABBA(ビョルン&ベニーBjorn & Benny)/落葉のメロディーHasta Manana (1974年)

 アーティスト名が「アバ(ビョルン&ベニー)」とは、、。しぶとい、、。

 

 ともかく、アバの男性2人だけとはいえ、世界で最初に売れた国であり、その影響でアバをいつまでもビョルン&ベニーと”言い張り”続けた 国が日本、というわけなんですね。

 

 そして、日本で長く残っていたビョルン&ベニーの”幻影を”、一気に吹き飛ばしたのがこの「ダンシング・クイーン」でした(海外では「SOS」や「マンマ・ミーア」ですでに大ブレイクしていましたが)。

 

 ここで、彼らは当時盛り上がっていた”ディスコ・サウンド”に取り組みます。リズムで参考にしたのは当時、特大のヒットだった「ロック・ユア・ベイビー」(ジョージ・マックレー)だったと言われています。

 


George McCrae - Rock Your Baby

 

 しかし、リズム以外は、この曲とも、当時の他のディスコ・ナンバーとはかなり違っているように聴こえます。

 「ダンシング・クイーン」はディスコ・ナンバーというより、ディスコのリズムを取り入れたポップスというイメージがあります。

 そして、アバの曲はどれもアレンジが強いですね。耳をつかまれるようなところが必ずあります。この曲でもピアノの”グリッサンド”から始まり、クラシカルなピアノのリフが要所要所に入ることで 、”いかにもディスコ” という曲と一線を画す効果を生んでいると思います。

 ちなみにこの曲はメロディが先に完成し、それを何度も何度も繰り返し聴きながら、メロディとサウンドがイメージする世界観を探り当てるように、時間をかけて歌詞を書いていったそうです。

 

 この曲を初めて聴かされた時、アンニ=フリッドは感激して泣いてしまったそうですし、アグネタは後年この曲が間違いなくアバの最高傑作だと断言しています。

 

 最後に、イギリスの新聞『ガーディアン』に「なぜ”ダンシング・クイーン”が史上最高のポップ・ソングなのか」という記事があって、その中でこういうエピソードが書かれていました。

    1996年にパンクの象徴的存在”セックス・ピストルズ”のリユニオン・コンサートがロンドンで行われたときに、1970年代にピストルズが現れて音楽シーンを変えたということを再現しようとする演出で、ライヴ前のBGMとしてベイ・シティ・ローラーズとか当時パンクと真逆の存在だった売れ線ポップスをわざとかけていたそうです。その代表のひとつとして「ダンシング・クイーン」が流れたとたん、会場にいたかつての”パンクス”たちはみんな、それに合わせて一緒に口ずさんでいたそうです。

 そのエピソードについて、映画「マンマ・ミーア」のプロデューサー、ジュディ・クレイマーが言ったコメントでこの記事は締められていました。

「それこそが”ダンシング・クイーン”に対して人々がすることなの。ただ降参するしかないのよ」

 

 

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