まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「Never My Love(ネバー・マイ・ラヴ)」アソシエイション(1967)

 おはようございます。

 アソシエイションの「ネバー・マイ・ラヴ」をまだ取り上げていなかったことに気づいたので、今日やります!


Never My Love (Remastered Version)

You ask me if there'll come a time
When I grow tired of you
Never, my love
Never, my love

You wonder if this heart of mine
Will lose its desire for you
Never, my love
Never, my love

What makes you think love will end?
When you know that my whole life depends
On you (on you)

Ba-ba-ba-ba-ba-ba (ba-ba-ba-ba-ba-ba)

Never, my love
Never, my love

You say you fear I'll change my mind
I won't require you
Never, my love
Never, my love

How can you think love will end
When I've asked you to spend your whole life
With me? (with me, with me)

Never, my love (never, my love)
Never, my love
Never, my love (never, my love)
Never, my love
Never, my love 

******************************

 

 ”君は僕に言う 私に飽きてしまう時が来るのかな

   絶対ないよ、愛しい君 絶対ないよ、僕の愛しい人

 

     君は思う 僕の心がやがて君への情熱を失ってしまうのかって

  絶対ないよ、愛しい君 絶対ないよ、僕の愛しい人

 

 どうして愛が終わってしまうなんて思うの?

 僕の人生をまるごと君に託しているって知っているのに

 

 絶対ないよ、愛しい君、絶対ないよ、僕の愛しい人

 

 君は僕が心変わりするのが怖いと言う 

 君を必要としなくなるんじゃないかって

 ありえないよ、愛しい君、ありえないよ、僕の愛しい人

 

 どうして愛が終わってしまうなんて思うの?

 僕は君に一生一緒にいてほしいとお願いしたのに

 

 絶対ないよ、愛しい君、絶対ないよ、僕の愛しい人  ”(拙訳)

 

***************************** 

 

「もし、誰かが「ネバー・マイ・ラヴ」を聴いたことがないと言ったら、僕はこういうよ”それは、君が人生でエレベーターに乗ったことも、スーパーマーケットに行ったこともないという意味になる”って。誰もこの曲から逃れられないんだ。ただ、そこに流れているんだよ」

 

 これはこの曲を書いたアドレシ・ブラザースの一人リチャード(ディック)・アドレシの言葉です。

 彼がそう言うのも当然、「ネバー・マイ・ラヴ」は20世紀のアメリカで、ラジオとテレビでの放送回数の総計が史上2位、演奏された回数も2位という、飛び抜けたスタンダードなんです。ビートルズの「イエスタデイ」が放送回数3位、演奏回数1位だったといいますから、「ネバー・マイ・ラヴ」はアメリカでは「イエスタデイ」並みの超スタンダード、20世紀にアメリカで暮らしていると、最も”勝手に耳に入ってくる曲”のひとつだったわけです。

 

  ちなみに、”20世紀アメリカで最も放送された楽曲リスト”で、彼らの他の曲では「チェリッシュ」が22位、「ウィンディ」が61位と3曲もチャートインしていて、これはサイモン&ガーファンクルの4曲についで2位の記録で、それだけ彼らはアメリカの大衆に愛されていたのです。

 

 

 昨日のブログでも書きましたが、曲を書いたアドレシ・ブラザースは長くアーティストと活動していて、この「ネバー・マイ・ラヴ」も自分たちのレパートリーとして書いたものです。

  今は亡き兄のドンが当時の彼女に結婚を申し込んだことがきかっけになったのだとディクは語っています。

 

 「彼(ドン)は 朝の3時に部屋に入ってきて僕を起こしたんだ。彼は『いまジャッキーに結婚を申し込んだところなんだ。彼女はいつか私に飽きてしまうと思うかと聞かれて、 "ネバー、マイ・ラヴ "と答えたんだよ。これって歌にするのに最高のアイデアじゃないかな?" 僕はベッドから飛び起きて、二人で曲を作り始めたよ」

 

 しかし、二人でこの曲を歌ってみるとハワイの”フラ”みたいになってしっくりこなかったそうです。そこで、レコード会社の人間から、自分たちでやりたい気持ちはわかるけど、儲けたかったらアソシエーションに提供したほうがいい、と言われ、彼らの前で歌ったらみんな気に入ってくれて、彼らが取り上げることになったそうです。

 

 

 さて、実はアソシエーションよりも先にこの曲をレコーディングしたアーティストがいます。それがジャニーズです。ジャニーズ事務所の第一号グループですね。

 彼らが武者修行をかねてアメリカ西海岸に渡ったときにレコーディングの話が持ち上がり、その指揮をとったのが、アソシエーションとアドレシ・ブラザースが所属していたヴァリアント・レコードのオーナーで、作曲家、プロデューサーのバリー・デ・ヴォーゾンだったのです。

 ちなみに、バリーは1970年代には映画の世界で活躍、リズム・ヘリテッジの「反逆のテーマ」("Theme from S.W.A.T.")、カーペンターズの「動物と子供たちの詩」などを作曲、映画「ザナドゥ」のオリヴィア・ニュートン・ジョンやE.L.Oの歌モノ以外の劇中音楽もこの人が作っています。

 

 さて、話を戻して、ジャニーズの「ネバー・マイ・ラヴ」はメンバーのあおい輝彦をメイン・ボーカルに録音されましたが、ジャニーズが解散することになりお蔵入りになったようです。

 あおい輝彦がライヴのMCでそのあたりの経緯を、けっこうな未練(?)を交えて語っている1977年の音源がアップされています。


あおい輝彦/ネバー・マイ・ラヴ Never My Love (1977年)

 

 ジャニー喜多川さんにとっても、本来自分たちのものだった歌が世界的なスタンダードになったことに対しては、誇りと苦い思いが混じり合って残っていたのでしょう、「ネバー・マイ・ラブ」はその後ジャニーズのアーティストに代々歌わせる”伝承歌”のような曲になっているようです。

 (最近でも、キスマイ、キンプリ、HiHiJETSなど若いグループもこの曲をステージで歌っています)

 

 数多あるこの曲のカバー・ヴァージョンで最もヒットしたのがスウェーデンのバンド、ブルー・スウェード1974年に全米最高7位になりました。このカバーの半年前に「ウガ・チャカ(Hooked on a Feeling)」を全米1位にに送り込んでいます。このノリノリなカバーを初めて聴いたとき、リチャード・アドリシは兄に向かって、今までで最悪のカバーだと言ったそうですが、大ヒットすると一番好きなカバーになったそうです、、。


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 せっかくなので彼らの代表曲「ウガ・チャカ」も聴いてみましょう。


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 アソシエーションの話から脱線してしまいますが、この曲はB.J.トーマスのヒット曲のカバーです。そこになぜ”ウガ・チャカ”なる掛け声を加えたのかは謎です。ただ、この掛け声は、この曲のプロデューサーであるジョナサン・キングなる人物が先に自身で1971年にリリースし、イギリスでスマッシュヒットになっていました。

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 このジョナサン・キング、アーティストの他にレーベルのプロデューサーとしても活躍した人でジェネシスを発掘し、10ccの名付け親で、ベイ・シティ・ローラーズのプロデュースも手がけています。音楽ビジネスというのはいわゆる”山師”たちの才能のせめぎ合いの場でもありますが、彼はこの時代のイギリスにおいて有数の”山師”であったのは間違いないでしょう。

 

 

 さて、「ネバー・マイ・ラブ」に話を戻して、この曲のソングライターであるアドリシ・ブラザーズが、アソシエーションのリリースから10年たってセルフ・カバーしています(1977)ので最後はこのヴァージョンで締めたいと思います。


Addrisi Brothers -Never My Love

 

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