まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。(現在は不定期で更新中)古今東西のポップ・ソングを、エピソード、和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などを交えて紹介しています。親しみやすいポップスは今の時代では”ニッチ(NIche)”な存在になってしまったのかもしれませんが、このブログがみなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。追加情報や曲にまつわる思い出などありましたらどんどんコメントしてください!text by 堀克巳(VOZ Record

「フラジャイル(Fragile) 」スティング(Sting)(1987)

おはようございます。今日はスティングの「Fragile 」です。

www.youtube.com

If blood will flow when flesh and steel are one
Drying in the color of the evening sun
Tomorrow's rain will wash the stains away
But something in our minds will always stay
Perhaps this final act was meant to clinch a lifetime's argument
That nothing comes from violence and nothing ever could
For all those born beneath an angry star
Lest we forget how fragile we are

On and on, the rain will fall
Like tears from a star, like tears from a star
On and on, the rain will say
How fragile we are, how fragile we are

On and on, the rain will fall
Like tears from a star, like tears from a star
On and on, the rain will say
How fragile we are, how fragile we are
How fragile we are, how fragile we are

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もし肉体と鋼が一つとなった時に血が流れるならば
それは夕日の色へ乾いていき
明日の雨がその痕を洗い流すだろう
しかし、僕らの心の中の何かは消えずに残る

もしかすると この最後の行いは
生涯にわたる議論に
終止符を打つためのものだったのかもしれない
暴力からは何も生まれない
これからも生まれない、と
怒れる星のもとに生まれたすべての者たちが
私たちがどれほど脆いものなのか忘れないように

延々と雨は降り続ける
星が流した涙のように、星が流した涙のように
何度も何度も雨は語り続ける
私たちがどれほど壊れやすいか、
どれほど脆いものか

延々と雨は降り続ける
星の流した涙のように、星の流した涙のように
何度も何度も雨は語り続ける
私たちがどれほど壊れやすいか、
どれほど脆いものか
どれほど壊れやすいか
どれほど脆いものか       (拙訳)

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「フラジャイル(Fragile) 」(スティング)のヤマハぷりんと楽譜はこちら

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「Fragile(フラジャイル)」はスティングが1987年にリリースしたセカンド・ソロアルバム『…Nothing Like the Sun(ナッシング・ライク・ザ・サン)』に収録され、翌1988年にはシングルとしてリリースされましたが、イギリスで最高70位と大きなヒットにはなりませんでした。しかし、年月とともに世界中の支持を集め、現在では彼の代表曲の一つになっています。

 この曲が書かれた背景についてスティングはこう語っています。

ニカラグア平和部隊にいたアメリカ人の青年が、コントラに撃たれて死亡したという記事を読んだんだ。すごく悲しくなったよ。彼は人々を助けようとして現地に行ったのに、誤ってなのか、故意なのかはともかく、マルクス主義ゲリラと誤認されて殺されたんだ。当時はそういう誤解が多かったと思う。この“Fragility(壊れやすさ)”というテーマは、僕にとって非常に重要だった。人を殺すのはあまりにたやすい。ほとんど何気ないことなんだよ。その後、この曲はいろんな意味を持つようになった。環境問題の歌だと考える人もいる。人々は脆弱な生態系を思い浮かべて、「スティングはきっとこのことについて歌っているに違いない」と思うんだろう。でも、良い曲というのは様々な意味の違いを持つものだと思うので、僕には異論はない。長い間、環境保護活動(tree-hugging)をやっているけど、環境保護の歌を書いたことはないよ。」
       —『Independent On Sunday』(1994年11月)

 コントラとはニカラグアの親米反政府武装組織の総称で、当時ニカラグアの政権を握っていた反米の「サンディニスタ民族解放戦線」(FSLN)と敵対していました。ニカラグアキューバのような脅威的な存在になることを恐れたアメリカはコントラを支援していたのです。

 そのニカラグア北部の農村地域で小規模な水力発電ダムの建設に従事していたアメリカ人技術者がベンジャミン・アーネスト “ベン”・リンダーです彼は技術者としてのボランティア活動に加え、道化師、ジャグラー、一輪車乗りなどが得意で現地の子どもたちを楽しませながら、予防接種キャンペーンなどにも参加していたそうです。その彼が1987年4月28日に、2人のニカラグア人とともにはコントラによる待ち伏せ攻撃を受けて亡くなってしまった、そのニュースをスティングは目にしたのです。

 海外でボランティアをやっていた青年が自分の母国が支援する軍事組織に殺される、というのはなんともやりきれないことです。しかし、現在も様々な地域で起こっている紛争を見ても、そこにはシンプルな対立構造などなくなっていて、その裏には第三国の利害が絡み合っている、それが当たり前のようになっています。このままではこういった敵味方もわからない”理不尽な悲劇”はなくなりそうもないと思えます。

 スティングはこうも語っています。

「『Fragile』のような曲は、毎年その意味が変わっていく。今歌うと、ボスニアユーゴスラビアのことが思い浮かぶよ」    —『マイアミ・ヘラルド』(1994年2月)

 この曲の歌詞の内容が当てはまるような争いは、絶えず世界で勃発している、ということなのでしょう。

 「フラジャイル」が長く支持されている理由の一つには、そういう世界の情勢もあるはずです。しかし、反面、歌詞がわからなくてもこの曲は強い哀愁感が人々の琴線に触れる優れたものだと僕は思います。実際、僕自身は歌詞の内容がわからないまま長年愛聴していました。

 再び、スティングのコメントです。

「社会問題でも政治でも、どんな問題でも、それを比喩(メタファー)の衣を着せることなしで、僕は曲作りに取り組んだことはない。プロパガンダや論争となる曲を書くことにまったく興味はなかった。『Fragile』は雨について、『They Dance Alone』は人々が一人で踊ることについて歌っている。もちろん、そこには隠された意味はあるけど、人々はそれを知る必要はないのさ。ロマンティックな恋愛について書くということは、いずれにせよ人間の状態をそれに置き換えて表現するものだといま僕は考えている。それは人間同士の繋がりについてであり、未来への楽観主義についてであり、それは未来に積極的に関わるということなんだ。」ー『The Muse』(1999年9月)

 反戦といった政治的な意図がそこにあったとしても、作品としては比喩を使いながらあくまでも人間の心の本質的なものへと落とし込んでいく、そうすることによって作品は未来も生き続けるものになる、そういう意味だと僕は解釈しました。だからこそ、この「フラジャイル」も今も世界中から広く支持されているのでしょう。

 最後はスティングが60歳になった時の記念コンサートで「フラジャイル」がとても好きだというスティーヴィー・ワンダーがカバーしている動画がありましたのでそちらをどうぞ。

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