まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「すべては風の中に (Dust In The Wind)」カンサス(1978)

 おはようございます。

 今日はカンサスの「すべては風の中に」です。

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I close my eyes, only for a moment
And the moment's gone
All my dreams pass before my eyes, a curiosity


Dust in the wind
All they are is dust in the wind


Same old song, just a drop of water
In an endless sea
All we do crumbles to the ground
Though we refuse to see


Dust in the wind
All we are is dust in the wind

 

Now, don't hang on, nothing lasts forever but the earth and sky
It slips away, and all your money won't another minute buy


Dust in the wind
All we are is dust in the wind
(All we are is dust in the wind)
Dust in the wind
(Everything is dust in the wind)
Everything is dust in the wind

The wind

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ほんの少しの間 目を閉じる
そして、その瞬間は過ぎ去ってしまった
僕の夢が全部目の前を通り過ぎていく、不思議さ


風の中の塵
すべては風の中の塵である


昔馴染みの歌、それもただ一滴の水さ
どこまでも続く海の中の
僕たちがすることはみんな、地面で砕けてゆく
目を背けようとも


風の中の塵
僕たちはみな風の中の塵

 

もう執着するな  永遠に続くのは地球と空だけ
滑り落ちてゆくのさ 
いくらお金があっても時間は買えない


風の中の塵
僕たちはみな風の中の塵
風の中の塵
すべては風の中の塵

            (拙訳)

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 カンサスはカンザス州トペカで結成されたバンドです(当時日本ではカンサス州って呼んでいたような、、)。

 中心となったのはギター/キーボードでソングライターのケリー・リヴグレン。彼が自分のバンドと、ドラマーのフィル・イハートがいたライバル・バンドのメンバーを合体させたことが、カンサスの基盤になりました。

 

 デビューは1974年でした。

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 ジャンルで言えばプログレッシヴ・ロックですが、バイオリンが入っているのが特徴ですね。しかも、クラシックなバイオリンじゃなく、アメリカ中西部らしいカントリーっぽいニュアンスを感じます。

 

 彼らは、数々の大物バンドの前座をつとめ、ライヴ・バンドとして人気を高めていきます。フリートウッド・マックのミック・フリートウッドマックは彼らが前座だと盛り上がりすぎて、自分たちは死んだようなものだったと後に語っていたそうです。

 

 そして、ようやく生まれた初の大ヒットは1976年の「伝承 (Carry On Wayward Son)」でした(全米11位)。

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Carry on my wayward son,
For there'll be peace when you are done
Lay your weary head to rest
Don't you cry no more

 

”負けずに進むがいい、強情な息子よ
何かを成し遂げた時 平穏がおとずれるから
おまえのその疲れた頭を休ませて
もう泣くんじゃない”

 

 この曲を書いたリヴグレンはこう語っています。

「自伝的な歌なんだ。音楽的なキャリアと並行して僕はいつも精神的な旅をしていた、真実や意味を求めてね。これは自分を励ます歌なんだ。僕は自分に言い聞かせていたんだ、探し続けろ、そして探していたものは見つかるって」

 ( Classic Rock September 01, 2016)

 

 昔から哲学書や宗教書や宇宙の本などを読み漁り、アマチュアの頃からスピリチュアルなテーマを追求した歌詞を書いていたというリヴグレンの集大成的作品であり、バンドの最大のヒットになったのが、この「すべては風の中に」でした(1978年 全米6位)。

  聖書の伝道の書に”皆ちりから出て、皆ちりに帰る”という言葉があるそうですし、日本人であれば「平家物語」の”ひとへに風の前の塵に同じ”を思い出すかもしれませんが、リヴグレンはインディアンの書物にこの言葉を見つけたそうです。

 

「ある日、アメリカ・インディアンの詩の本を読んでいて、その一節を見つけたんだ。そのアメリカン・インディアンは言っていた"for all we are is dust in the wind." と。 僕は本当にその通りだと思った。 僕は今のような成功を手に入れ、物質的な財産を持ち、その時点での人生の目標を達成した。だけど僕はまた土に帰ってしまう。それを考えると、これは本当に意味のあることなのか? それが、この曲のメッセージなんだけど、驚いたことに、すごいたくさんのがそれに共感したんだ」

 

「この曲がどうやって生まれたかというと、僕はいつも、バンドのリード・ギターで、ロックンロールのエレクトリック・ギター・プレイヤーだった。 アコースティック・ギター・プレイヤーだったことは一度もない。 だから、自分の音楽の世界を広げようとしてアコースティック・ギターを持ってフィンガーピックを学ぼうとしたんだ。それで、フィンガーピックを学ぶために、このフィンガー・エクササイズを作ったのさ。

 練習のためにミュージック・ルームでこれを弾いていると、妻が通りかかって、しばらく立ち止まって聴いていた。そして彼女は言ったんだ"ねえ、すごくきれいね。それに歌詞をつけるべきよ”って。 僕は”いや、これはただ練習しようとしているだけなんだ。”と答えた。 彼女は”ダメ、ダメ、本当にいいんだから。それを忘れないで”と言ってくれた。 そして、彼女はこの「きれいな曲」のことを、ずっと僕に口うるさく言い続けたんだ。 それで、僕は歌にすることにしたのさ」

 

  そして、"for all we are is dust in the wind."という一節をハミングしながらフィンガーピッキングの練習をしていたら、15分後には曲ができていたといいます。

 

 そしてアルバムのレコーディングの終盤になって、メンバーから他に新しい曲はないかと言われ、”気に入らないと思うけど”と前置きして、リヴグレンがこの曲を演奏すると、メンバーは絶賛したそうです。リヴグレン本人も、大げさな曲が好きだったらしく、この曲はカンサスらしくないのでやらないほうがいいと思ったそうですが、結果、バンドを代表するものになったわけです。

 

 昨日、このブログに登場したスティックスも、このカンサスも”アメリカン・プログレ”を代表する老舗バンドだったわけですが、どちらのバンドも最大のヒット曲が、本来バンドのレパートリーにするつもりじゃなかったもので、しかも曲作りに奥さんが大きく関わっていた、という共通点があったんですね。

 

  また、アコースティック・ギターがメインだったため、この曲はカントリー・チャートやイージーリスニング・チャートでも上位に入る”クロス・オーヴァー・ヒット”になりました。

 

 その後、リヴグレンは1983年にバンドを脱退しますが、彼が1979年に福音主義キリスト教徒となり、それが作品にも強く反映されていったことが、原因の一つとされています。

 

 スティックス、ジャーニー、ボストン、フォーリナーなど、アリーナ・ロック、当時日本では産業ロックなどとも呼ばれましたが、その中でカンサスは、レコード・セールス的には他のスーパー・バンドより下がってしまいますが、他のバンドのヒット曲の多くが古びてしまったのに対し、この「すべては風の中に」と「伝承」はロック・クラシックスとして今も人気が衰えていません(「すべては風の中に』のMVはYouTubeで1億9千万回も再生されています)。

 曲の良さはもちろんですが、精神性の強い歌詞のメッセージに普遍性があって、現代を生きる人たちにもアピールしている、というのもすごく大きいのではないかと思います。

 スピリチュアルなアリーナ・ロック、という不思議な定義ができるバンドなのかもしれないですね、カンサスは。

 

最後は、この曲の歌詞の世界観をわかりやすく広げた感のある、サラ・ブライトマンのカバーを。

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ネットオフ

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