まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ヘイ・ナインティーン (Hey Nineteen )」スティーリー・ダン(1980)

 おはようございます。

 今日はスティーリー・ダンの「ヘイ・ナインティー 」です。


Hey Nineteen

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Way back when in sixty seven
I was the dandy of Gamma Chi
Sweet things from Boston
So young and willing
Moved down to Scarsdale
And where the hell am I

Hey nineteen
No we can't dance together
No we can't talk at all
Please take me along
When you slide on down

Hey nineteen
That's 'Retha Franklin
She don't remember the Queen of Soul
It's hard times befallen
The sole survivors
She thinks I'm crazy
But I'm just growing old

Hey nineteen
No we got nothing in common
No we can't talk at all
Please take me along
When you slide on down

Nice
Sure looks good
Skate a little roller now

The Cuervo Gold
The fine Colombian
Make tonight a wonderful thing
Say it again

The Cuervo Gold
The fine Colombian
Make tonight a wonderful thing

The Cuervo Gold
The fine Colombian
Make tonight a wonderful thing

No we can't dance together
No we can't talk at all

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はるか昔  1967年に戻れば

オレはガマ・カイのダンディだった

ボストンから来たイケメンさ

とても若くて やる気もあった

スカースデイルまでやってきた

それで、オレはいまどこにいるんだっけ?

 

ヘイ 19才の彼女

一緒にダンスは踊れないし

話も全然噛み合わない

ここをそっと抜け出すときは

オレも連れて行ってくれ

 

ヘイ ナインティー

それはアレサ・フランクリンだよ

彼女はソウルの女王を知らないんだって

あの頃のたったひとりの生き残りにとっては

大変な時代になっちまったな

彼女はオレはイかれてるって思っているけど

ただ年をとったってことなんだ

 

ヘイ ナインティー

共通の話題なんてないし

話も全然合わない

君がここをそっと抜け出すなら

オレも連れて行ってくれ

 

 ナイス、ほんといい感じだ、今度はもう少し低く踊ってみよう

 

クエルボ・ゴールド(テキーラ)と

最高のコロンビア産(マリファナ)が

今夜を素晴らしいものにしてくれる

 

一緒にダンスもできないし

話も全然合わない、、                 (拙訳)

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 19才の女の子に、猛烈にジェネレーション・ギャップを感じながら、なんとか楽しい夜を過ごそうと懸命なおじさんの歌です。

 

「Gamma Chi」は学生のクラブのことらしく、卒業生の友愛会的なものから、プレイボーイ・クラブという説もあり、はっきり実態がつかめません、、。

 

 また、アレサ・フランクリンのくだりで「The sole survivors」という言葉が出て来ますが、たった一人の生き残りという意味に、1970年代に活躍したフィラデルフィア・ソウルのグループ「The Soul Survivers」をひっかけたのだと思われます。

 

 それから、曲間に独り言のように「Skate a little roller now」とドナルド・フェイゲンが言いますが、この「Skate」、ローラースケート説もありますが、1960年代に流行したダンスのジャンル「Skate」を指すという意見もあって、僕はそっちを取りました。

 女の子が踊っている姿を見ながら、一昔前のダンスのフレーズを口走ってしまうという、、。

 

 

 スティーリー・ダンニューヨークのバード・カレッジ在学中に知り合ったドナルド・フェイゲンウォルター・ベッカーを中心に結成されたました。当初はバンドでしたが、だんだんと彼ら二人のユニットになっていきました。

 

 最初二人はソングライター・チームとして活動を始めましたが成功しませんでした。そこで、ABCレコードにレーベルのスタッフライターとしてスカウトされLAに移り住みますが、彼らの曲は特に歌詞が難解でひねくれていることが主に災いしてうまくいかず、当人たちも自分たちでやりたいという気持ちが強かったためバンドを組むことになりました。

 

 1972年にアルバム「キャント・バイ・ア・スリル」でデビュー、1977年の6枚目のアルバム「彩(エイジャ)」が大ヒットします。

 

 バンドを名乗りながら、最高のスタジオ・ミュージシャンたちをかき集め、その技量を精査しながら作品に組み込んでゆくという”完璧主義”的な音作りは、当時の音楽シーンの中でも異質なものでした。

 

 そして「彩(エイジャ)」の2年後にリリースされたアルバムが「ガウチョ」で、そこからのファースト・シングルがこの「ヘイ・ナインティーン」(全米10位)でした。

 

  <ちなみに「ガウチョ」は「放浪者」「孤児」を語源とする南米の”カウボーイ”にあたる人々。”ガウチョ・パンツ”というネーミングもここから来ていますが、本物の”ガウチョ・パンツ”とはけっこう違うもののようです>

 

 このアルバムの大きなトピックは、彼らがLAからNYに戻って作ったということです。

 不思議なもので「彩(エイジャ)」と「ガウチョ」を聴き比べると、前者は西海岸っぽい音がしますし、後者はニューヨークって感じがするのです。これは、この時代のLA産とNY産のロックをたくさん聴いた人であればきっと感じるものだと思います。

 

 また、「彩(エイジャ)」ではアコースティック・ピアノがメインだったのが、一転し「ガウチョ」ではエレピとシンセのサウンドへと移行しています。

 

 そして、このころの彼らは高精度なプレイを徹底して突き詰めるモードになっていたようで、彼らのためにエンジニアのロジャー・ニコルスが”ウェンデル”というリズム・マシーンを開発したそうです。

 ドラム・マシーンがまだ出回っていないときで、80年代に一世を風靡するドラム・マシーン”リン・ドラム”と同じ時期に作ったものでした。

 ドラマーの演奏をサンプリングして、それを完全に正確なビートに置き換えるというものだったようです。ただ機械のように正確じゃなく、”タメ”や”抑揚”も表現できるように設計されたといいます。

 そしてウェンデルが初めて使われたのがこの「ヘイ・ナインティーン」でした。1970年代のスーパー・ドラマーであるリック・マロッタにドラムを叩かせ、それを”ウェンデル”に取り込んだあと、ドナルドとウォルターが望むようなリズム・パターンとして再現したようです。

 「ヘイ・ナインティーン」は1980年代の音楽の主流になるドラム・マシーンを使った先駆けのもの、最初期のヒット曲だったと言えます。

 

 ドナルド・フェイゲンはこう語っています。

「本物のライヴっぽいサウンドにはしたくなかったからだ、ぼくらは初期のリズム&ブルースの、一種、メカニカルなヴァージョンをめざしていた。ちょっと機械っぽいサウンドにして、それをヒュー・マクラッケンの、温かみがあるオブリガート・ギターと対比させるのがぼくらのねらいだった」

 

 そして、歌詞の世界についてはこう語っています。

「ソングライターはみんな、センチメンタルな恋を十八番にしている。実際のはなし、ぼくらもしょちゅう使っているけど、ぼくらの場合はアングルをほんのちょっと変えて、男女関係の性質もほんのちょっと変えるようにしている。揶揄するのさ。揶揄するのはリズム&ブルースの伝統だからね」

 (「スティーリー・ダン・ストーリー リーリン・イン・ジ・イヤー」)

 

 彼が「ヘイ・ナインティーン」で狙ったのは、古いリズム&ブルースのスタイルを、新しい時代に再生させることだったのかもしれません。

 

ガウチョ」からもう1曲「Time Out of MInd」。当時有名になり始めたばかりのダイアー・ストレイツマーク・ノップラーがギター・ソロを弾いています。


Time Out Of Mind

 

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