おはようございます。
今日はナイアガラ・トライアングルの「A面で恋をして」です。
<ナイアガラ・トライアングルVOL2>というのは大瀧詠一、佐野元春、杉真理の3人です。
VOL.2があるということは当然<ナイアガラ・トライアングルVOL.1>があるわけで、1976年に大瀧詠一、山下達郎、伊藤銀次というメンバーで結成されています。
VOL.1にも2にも、大瀧詠一がいるということは、発起人は彼なんですね。当時彼は”エレック”というレーベルから”コロムビア”に移籍が決まったタイミングで、"エレック”時代に一緒にやってきた弟分のような存在である山下達郎と伊藤銀次と一緒に何か作りたいと思ったようです。
そこで大瀧が山下、伊藤にプレゼンしたのが「ティーンエイジ・トライアングル」というレコード(COLPIXレコードの3大スターシェリー・フェブレー、ジェイムス・ダーレン、ポール・ピーターセンのヒット曲を集めた オムニバス・アルバム)でした。
シェリー・フェブレーは「ジョニー・エンジェル」で有名ですね。
<ナイアガラ・トライアングル>という名称は、この企画を参考にしていたのです。
そして、その5年後に<ナイアガラ・トライアングルvol.2>が結成されました。
この企画のきかっけは「A LONG VACATION」のヒットで、大瀧の元に資生堂のCMタイアップの話が来たことでした。
その頃はアルバムは大ヒットしても、アルバムの曲はさほどヒットしていない状況で、ここで資生堂のCMソングを歌えばヒット間違いなしで、それが大瀧詠一の決定打になってしまって、歌手として引くに引けなくなることを危惧した彼は、その話を断ったそうです。
しかし、そこでCMのキャッチコピーができているといって聞かされたのが”A面で恋をして”というコピーでした。
「言われたときパッとできちゃった(笑)。あー、できちゃったなぁ、大瀧詠一で「A面で恋をして」、売れそうだなぁと。」
「じゃ、ここで大滝詠一という名前を使わないですむ手はないか。で、思いついた。『ナイアガラ・トライアングルVOL2』しかない、と(笑)。まだ、”A面で恋をして”って部分しかできてなかったけど、これをトライアングルでやるんだと思った瞬間、バディ・ホリーのスペクター・サウンドっていうイメージができちゃった。そうすると、あと二人いないと成立しない。じゃ、これは佐野くんと杉くん、この二人しかない、と」
(大滝詠一 Talks About Niagara Complete Edition)
”バディ・ホリーのスペクター・サウンド”、大瀧はご存知の通り、モノラルのフィル・スペクターの”ウォール・オブ・サウンド”をヒントに、それをステレオ・サウンドに再構築した”ナイアガラ・サウンド”がトレードマークでした。
それをバックに歌うバディ・ホリーというイメージで、具体的な楽曲としては「Everyday」を想定したようで、特徴的な”A-hey, a-hey-hey”というフレーズも取り入れています。
「Everyday」はバディ・ホリーの代表曲「ペギー・スー」のB面に収録されていたもので、シングルは1957年に全米3位になっています。
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Every day, it's a-getting closer
Going faster than a rollercoaster
Love like yours will surely come my way
A-hey, a-hey-hey
Every day, it's a-getting faster
Everyone said, "Go ahead and ask her"
Love like yours will surely come my way
A-hey, a-hey-hey
Every day seems a little longer
Every way, love's a little stronger
Come what may
Do you ever long for true love from me
Every day, it's a-getting closer
Going faster than a rollercoaster
Love like yours will surely come my way
A-hey, a-hey-hey
Every day seems a little longer
Every way, love's a little stronger
Come what may
Do you ever long for true love from me
Every day, it's a-getting closer
Going faster than a rollercoaster
Love like yours will surely come my way
A-hey, a-hey-hey
Love like yours will surely come my way
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毎日、どんどん近づいていく
ジェットコースターよりも速く
君のような愛はきっと僕のほうにやってくる
毎日、どんどん早くなっていく
みんなが言った「彼女を誘ってみなよ」って
君のような愛はきっと僕のほうにやってくる
毎日、ちょっと長く思える
あらゆる意味で、愛はちょっと強い
どんなことがあっても
僕からの本当の愛を待ち焦がれているのかい?
毎日、どんどん近づいていく
ジェットコースターよりも速く
君のような愛はきっと僕のほうにやってくる
毎日、ちょっと長く思える
あらゆる意味で、愛はちょっと強い
どんなことがあっても
僕からの本当の愛を待ち焦がれているのかい?
毎日、だんだん近づいていく
ジェットコースターよりも速く進む
君のような愛はきっと僕のほうにやってくる
(拙訳)
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ちなみにこの曲はジェームス・テイラーやジョン・デンバー、最近ではフィオナ・アップルもカバーしています。
また大瀧はこの曲以前にもバディ・ホリーをイメージした曲をリリースしています。彼の「ペギー・スー」を1970年代ファンキー・サウンドでアプローチした「しゃっくりママさん」(1975)。
「しゃっくりママさん」を元に、沢田研二に書いた「あの娘に御用心」(1975)。コーラスは大瀧と山下達郎。
最後はこの曲のカバーを2つ。
2001年、高田文夫が自身のラジオ番組の企画で「A面で恋をして」に合わせて歌詞を書いた「冷麺で恋をして」。大瀧はこの企画を快諾したそうです。歌っているのは東貴博。歌手名は小滝詠一。”こたき”ではなく、韻を合わせて”しょうたき”と読むのだそうです。
2020年の原田知世のカバー。アレンジは伊藤ゴロー。彼はボサノヴァの名手というイメージが僕にはあったのですが、こういうアレンジもやるんですね。