まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「夜明けの天使(Angel of the Morning)」ジュース・ニュートン(1981)

 おはようございます。

 今日はジュース・ニュートンの「夜明けの天使」です。

www.youtube.com

********************************************************************************

There'll be no strings to bind your hands
Not if my love can't bind your heart
There's no need to take a stand
For it was I who chose to start


I see no need to take me home
I'm old enough to face the dawn


Just call me angel of the morning, angel
Just touch my cheek before you leave me, baby
Just call me angel of the morning, angel
Then slowly turn away from me


Maybe the sun's light will be dim
And it won't matter anyhow
If morning's echoes say we've sinned
Well, it was what I wanted now


And if we're victims of the night
I won't be blinded by the light


Just call me angel of the morning, angel
Just touch my cheek before you leave me, baby
Just call me angel of the morning angel
Then slowly turn away, I won't beg you to stay with me


Through the tears
Of the day
Of the years
Baby!


Just call me angel of the morning, angel
Just touch my cheek before you leave me, baby
Just call me angel of the morning, angel
Just touch my cheek before you leave me, darling
Just call me angel of the morning, angel
Just touch my cheek before you leave me, darling

 

********************************************************************************

あなたの両手を縛る糸はないでしょう
私の愛があなたの心を縛ることができないとしても
それを態度で示す必要はないの
そうすることを選んだのは私だから


私を家に連れて行けないのはわかるわ
私は夜明けを受け入れるほど大人だから


ただ、私を朝の天使と呼んで 、天使だと
立ち去る前に頬に触れてくれるだけでいいの、ベイビー
私を朝の天使と呼んで、天使だと
そして、ゆっくりと私に背を向けて行くの


太陽の光は翳ってゆくでしょう
それは、もうどうでもいいこと
朝の声が私たちは罪を犯していると言っても
それは、私が望んだことだから


もしも、私たちが夜の犠牲者だとしても
私は光に目を奪われたりしない


ただ、私を朝の天使と呼んで 、天使だと
立ち去る前に頬に触れてくれるだけでいいの、ベイビー
私を朝の天使と呼んで、天使だと
ゆっくりと私に背を向けても、一緒にいてと頼んだりしないわ


涙を流した日
涙を流した年月 ベイビー


ただ、私を朝の天使と呼んで 、天使だと
立ち去る前に頬に触れてくれるだけでいいの、ベイビー
私を朝の天使と呼んで、天使だと
立ち去る前に頬に触れてくれるだけでいいの、ダーリン、、

 

      (拙訳)

********************************************************************************

 1975年にデビューして以降、カントリー・チャートの下位に入る程度のヒットしかなかったジュース・ニュートンを一躍有名にした、不倫を切なく描いた歌「夜明けの天使」(全米4位)は1960年代に作られた曲のカバーでした。

 

 作ったのはチップ・テイラー。このブログではジェームス・テイラーが組んでいたバンド、フライング・マシーンのプロデューサーとして紹介しましたが、元々ソングライターで、自分でもアーティスト活動をしていた人です。

 1960年代には”アルドン・ミュージック”が入っていた”1650ブロードウェイ”のビルに出入りして、大好きなキャロル・キングのデモが聴けるのを楽しみにしていたそうです。ちなみに俳優のジョン・ヴォイドの弟ですから、アンジェリーナ・ジョリーの叔父さんなんですね。

 

   Wikipediaによると”エドモント・ジャーナル”の取材でチップはこう語っていたそうです。

「”夜明けの天使”はニューヨークを車で走っていた時に、ローリング・ストーンズの”ルビー・チューズデイ”をラジオで聞いてから、書いたんだ。そういう感じのパッションをつかまえたかったんだ」

 

 けっこう意外な曲にインスパイアされたんですね。しかも”ルビー・チューズデイ”は、誰のものにもならない、夢を追い続ける自由な女性の歌で、こちらは不倫関係にいじらしく耐える女性”で正反対にも思えるのですが、主人公目線からすれば”相手を縛ることはできないことを理解しながら、愛してしまう”という共通点はあるのかもしれません。

 

 この曲は最初にコニー・フランシスに提案されましたが却下されたそうです。健全なアメリカン・ポップスのアイコンであった彼女に”不倫の歌”はリスクが高いと判断されたようです。

 そして、この曲を最初にレコーディングしたのはイーヴィー・サンズでした。大ヒットこそないですが、1970年代にリリースしたアルバムでコアなAORファンからは人気の高いシンガーです。

 

 チップとよくペアを組んで仕事をしていたギタリスト、アル・ゴルゴニ(彼もジェームス・テイラーのフライング・マシーンのプロデューサーでした)が彼女のプロデュースをやっていて、チップとアルが共作してホリーズがヒットさせた「I Can't Let Go」もオリジナルは彼女でした。

 そんなわけこの「夜明けの天使」は彼女が最初にレコーディングしました。

www.youtube.com

 しかし、このレコードが出荷された週に、レコード会社の”カメオ/パークウェイ"が倒産してしまい、彼女のレコードは宣伝されることなく埋もれてしまいました。

 

 この曲をヒットさせたのがメリリー・ラッシュで1968年のことでした(ビルボード全米7位)。

 ワシントン州出身の彼女はメリリー・ラッシュ&ザ・ターナバウツというバンドを組み、ポール・リヴィア&ザ・レイダーズの南部ツアーの前座をやった時に、プロデューサーのチップ・モーマンを紹介され、彼の所有するメンフィスの”アメリカン・サウンド・スタジオ”でこの曲をレコーディングしました。

www.youtube.com

  もともとはニューヨーク産の曲だったのですが、南部で作られたヴァージョンが大ヒットしたことで、カントリーと近いものとして定着した、と言えるのかもしれません。

 

 そして、この「夜明けの天使」をカバーさせ、メリリー以上の大ヒットにしたジュース・ニュートンはカントリー・シンガーとされていますが、ニュージャージー生まれでヴァージニア州で育ち、大学はカリフォルニアで音楽活動もそこでスタートさせていますので、アメリカ中西部にルーツを持つような、いわゆる生粋のカントリー・シンガーではないんですね。

 

 1975年にジュース・ニュートン&シルバー・スパーというバンドでデビューし3年活動しますが、結局成功しませんでした。しかし、彼女とバンド・メンバーのオサ・ヤングが自分たち用に書いてレコード会社に却下された曲が、カーペンターズに採用されていヒットしています。それがこの曲。

「スウィート・スマイル(Sweet、 Sweet Smile)」

www.youtube.com

 

 彼女は1978年にソロ・デビューをし、ソロ・デビュー曲はボニー・タイラーのヒット曲「イッツ・ア・ハートエイク」のカバーでした(全米86位)。

www.youtube.com

 その後、カントリー・チャートの小ヒットを出すだけだった彼女に「夜明けの天使」

を歌うことを提案したのが、レコード会社のプロモーション・ディレクターだったスティーヴ・マイヤーでした。

「「夜明けの天使」をスティーブ・メイヤーが持ってきたのは、私たちがすでにスタジオに入ったときだった。私はこの曲を正直好きじゃなかったわ。それほど意識さえしていなかった。もちろん、自分の解釈で入れたい何かがあるかどうかを確認するためにオリジナルを聴いた。オリジナルよりも良いレコードを作れると思えないなら、やるべきじゃないの」

 (MR.MEDIA   December 8, 1983)

   

 そして、この曲の後も彼女はヒットを連発しました。

 

「クイーン・オブ・ハート(Queen Of Hearts)」1981年全米2位

www.youtube.com

「愛のサンシャイン(Love's Been A Little Bit Hard On Me)」1982年全米7位

www.youtube.com

 

 最後は1995年のプリテンダーズのカバーを。人気TVドラマ「フレンズ」のためにレコーディングされたようです。

www.youtube.com

 

f:id:KatsumiHori:20211002123213j:plain

 

楽器買取専門店【楽器の買取屋さん】最短30分の無料の出張見積もり

ネットオフ

お名前.com