まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ナイト・イン・ニューヨーク」エルボウ・ボーンズ&ザ・ラケッティアーズ(1983)

 おはようございます。

 今日も、昨日に続いて”80年代ニューヨークの夜もの”。エルボウ・ボーンズ&ザ・ラケッティアーズの「ナイト・イン・ニューヨーク」です。

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I have known a thousand eyes
Who would knock my big brown eyes
And at least a hundred times
They have almost lost their minds
I have had them promise me
Caviar and limousines
But if they really knew me
Really, if they knew me
They'd take me for a night in New York
Take me for a night in New York
Oh, take me for a night

You have had so many girls
Speak of fancy cars and pearls
And the girl I used to know
Only dated guys with plenty dough
Women all have need a guy
She don't have to tell big lies
'Cause if he really knew me
He could really wound me
And take me for a night in New York
Take me for a night in New York
Oh, take me for a night

Once we're at Central Park
Is guaranteed to win a heart
A streetserenader's guitar
Sings the stars out just where we are
So if you wanna please me
I don't mind if you tease me
Just take me for a night in New York
Take me for a night in New York
Oh, take me for a night

So if you wanna please me
I don't mind if you tease me (Don't mind if you tease me
Just take me for a night in New York
Take me for a night in New York
Oh, take me for a night
Take me for a night

So if you wanna please me
I don't mind if you tease me
Take me for a night in New York
Take me for a night in New York
Take me for a night in New York
Oh, take me for a night

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千もの視線が
私の大きな茶色の瞳に釘付けだって知ってるわ
そして少なくとも100回は
彼らの頭がおかしくなりそうだったことも
私は彼らにキャビアとリムジンを約束させた
でも、もし彼らが本当に私のことを知っていたら
本当に、私のことがわかっていたら


私を夜のニューヨークに連れて行ってくれるはず
私を夜のニューヨークに連れて行って
ああ、一晩連れて行って

 

たくさんの女の子と付き合っていたわね
派手な車と真珠の話をするような
私が知っていた女の子は
金持ちとしかデートしない
女にはみんな男が必要なの
大きな嘘をつく必要はない
だって、もし彼が私のことを本当に知っていたら
私を傷つけることだってできるから


夜のニューヨークに連れて行って
私を夜のニューヨークに連れて行って
ああ、一晩連れて行って

 

一度でもセントラルパーク過ごしたら
心を勝ち取れるって保証するわ
街のセレナーデのギターが
私たちがいる場所で歌で星を生み出すの
だからもしあなたが私を喜ばせたいなら
私をからかっても構わないから


ただ、私を夜のニューヨークに連れて行って
私を夜のニューヨークに連れて行って
ああ、一晩連れて行って

あなたが私を喜ばせたいなら
私をからかっても構いから


私を夜のニューヨークに連れて行って
私を夜のニューヨークに連れて行って
ああ、一晩連れて行って
一晩連れて行って

 

だから、もし、私を喜ばせたいなら
私をからかってもかまわない
私を夜のニューヨークに連れて行って
私を夜のニューヨークに連れて行って
ああ、一晩連れて行って

(拙訳)

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 このエルボウ・ボーンズ&ザ・ラケッティアーズはオーガスト・バーネルが作ったバンドです。オーガスト・バーネルはキッド・クレオールという芸名で知られています。

昔、日本でこんなCMに出ていて人気者になりました。

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 彼のバンド、キッド・クレオール&ザ・ココナッツに影響を受けたのが米米クラブで、確か彼らは共演もしていました。

 

 さて、キッド・クレオールことオーガスト・バーネルは本名をトム・ブラウナーというそうで、ブロンクスに生まれています。

 

 1965年に異母兄弟のストーニー・ブロウダーとインロウズというバンドを結成しますが、英語教師としてのキャリアを積むためにバンドは解散し、彼は実際に中学校で教鞭をとっていたそうです。

 しかし、音楽への気持ちが断ち切れなかったのでしょう、1974年に彼はストニーと一緒に”ドクター・バザーズ・オリジナル・サヴァンナ・バンド(Dr. Buzzard's Original Savannah Band)”を結成し、作詞家兼ベーシストとなります。

 彼らの「シェ・シェ・ラファム」が1976年に全米27位になっていて、のちにグロリア・エスティファンもカバーしています。

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 こういうスタイルを日本でいち早く取り入れたのが加藤和彦で、竹内まりやのデビュー曲「戻っておいで・私の時間」のアレンジにとり入れています。

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 1979年に兄ストーニーのワンマン体制に不満を持つようになり、自分の音楽を追求するためにバンドを脱退します。そして、1980年にはエルヴィス・プレスリーの映画『キング・クレオール』からヒントを得て、”キッド・クレオール”と名乗るようになります。そして「キッド・クレオール・アンド・ザ・ココナッツ」を結成し、キャブ・キャロウェイに代表されるビッグ・バンドに、サルサ、ジャズ、ポップ・ミュージック、ディスコなどをミックスした、よりインパクトの強いスタイルを確立します。

 

 オリジナル・サヴァンナ・バンドとキッド・クレオールとの違いをこう語っています。

「自分のバンドを作り始めたときに、やりたいと思ったのは、Dr. バザーから受け継いだものを維持しながら、同時に違ったものにアクセントを置くことだった。その中でも特に残しておきたいと思ったのは、40年代への憧れだ。キッド・クレオール&ザ・ココナッツでは、全員でズートスーツを着たいと思っていしたし、ハンフリー・ボガートクラーク・ゲーブルのようなマチネのアイドルのようになりたいと思っていたんだ。でも、そういうスタイルや40年代へのリスペクトを忘れずに、オールド・タイムな感じを出しながらも、サバンナ・バンドのときよりもアイランド/カリビアンな感じを強調したいと思ったんだ」

 (Blues &Soul)

 彼らはアメリカではなかなか売れなかったのですが、1982年にイギリスで突如ブレイクします。

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 この曲を含むシングル3枚がベスト10入りし、アルバム「トロピカル・ギャングスターズ」は3位まであがる大ヒットになりました。

 

   そして彼が新たにプロデュースしたバンドが、このエルボウ・ボーンズ&ザ・ラケッティアーズでした。

 エルボウ・ボーンズとは本名をジョン・リンスキーといって本業はフィトグラファーでした。

「1980年に彼らと一緒についてまわり、背景や写真、ビデオを撮影し、すべてのショーに行ったよ。彼らと一緒にいるためには何でもやった、トラックの運転だってやったんだ。オーガストは、私がいつも彼の注意を引こうとする(elbowing into his ribs、肘で肋骨を突っつく)ので、僕のことをパラサイトだと思っていたようです。それで、エルボウ・ボーンズと彼は僕を呼んでいたんだけど、それはまったくの蔑称なんだよ」

 (https://www.jonkutner.com/

 

 「詐欺師たち」という意味のラケッティアーズ(racketeers)は、フランク”パゴパゴ”パサラクア、ギチー・ダン、ケン・フラッドリー、リー・ロバートソン、そしてココナッツのメンバー、キャロル・コールマンというメンバーでした。

 

 ジョン・リンスキーは彼にバンドのアイディアを提案しますが、全く興味を持ってもらえなかったそうで、そこで相談したのがキッド・クレオールの兄、ストーニーにでした。彼のバックアップでキッドがツアーで不在の間にデモを作ったそうで、帰って来てその音源を聴いたキッドは急に興味を持つと行動に移し、メジャーレーベルとの契約を勝ち取って来たのだそうです。

 

 そして、当時キッド・クレオールが制作していた四枚目のアルバムに作家として参加していたロン・ロジャースに書かせたのがこの「ナイト・イン・ニューヨーク」だったのです。そして、シングルのB面にはストーニーが書いた「ハッピー・タイムス」という曲が収録されています。

 

  ジョン・リンスキーはキッド・クレオールことオーガスト・ダーネル

「ダーネルはまわりにいるたくさんの才能を利用するのを見てきたけど、彼の方からは与えることはあまりないんだ」とちょっと辛辣にコメントしていますが、確かに最初は興味示さなかったのに、ある程度出来上がったものを見て気にいると自分のプロデュースのものにしたわけで、そういうところがある人かもなあ、などと思ってしまいます。

 

 それから、エルボウ・ボーンズ&ザ・ラケッティアーズはココナッツよりオリジナル・サヴァンナ・バンドに近い感じがするのはストーニーがからんだからかな、とも推測してしまいます。

 

 最後に、「ナイト・イン・ニューヨーク」の次のシングル「Happy Birthday、Baby」を。

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