まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「こぬか雨」伊藤銀次(1977)

 おはようございます。

 今日は伊藤銀次の「こぬか雨」です。

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 こぬか雨。糠(ぬか)の粉のような粒の細かい雨、霧雨のことですね。

 作者の伊藤銀次は、<こぬか雨降る御堂筋〜♩>の欧陽菲菲(オーヤン・フィーフィー)の「雨の御堂筋」(1971年。ベンチャーズのインストに歌詞をつけ大ヒットしました)から、曲のヒントを得たそうです。

 

 彼は同じ頃、シュガー・ベイブの「DOWN TOWN」の七色、シャボン玉、といった歌詞を「ラブ・ユー東京」<七色の虹が消えてしまったの〜シャボン玉のような〜♩>(黒沢明ロス・プリモス)からとっているので、この当時は意図的にそういった切り口を狙っていたのかもしれません。

 

 「”こぬか雨”は「こういう曲があるんだよ」って聴かせたら山下くんが気に入って、「シュガー・ベイブでやっていい?」ということになって。ただ、ちょっと自分の感覚に合った詞に変えたいということで、一部歌詞を変えてテンポをちょっと早くして、シュガー・ベイブのライヴでやってたんですよ。だからあのままシュガー・ベイブが解散しないでセカンド・アルバムを作ったら、きっと入ってたでしょうね」

  (伊藤銀次 自伝 MY LIFE POP LIFE)

 

 シュガー・ベイブのライヴ音源は『SONGS -40th Anniversary Ultimate Edition-』(2015年)のボーナス・トラックとして、1976年4月1日に荻窪ロフトで行われたシュガー・ベイブ解散ライブからのライブ音源が収録されています。

 

 彼も一時シュガーベイブに在籍していたこともありますが、山下達郎が求めているものと彼の音楽性が合わず、わずか3ヶ月で脱退しています。

 

 その後、彼のソロアルバムを作る話が来ます。それが、現在シティポップの隠れた名盤とされている「DEADLY DRIVE」です。

 

 「”こぬか雨”も、シュガー・ベイブのライヴでテンポを上げてやっていたけど、あれは山下くんのアレンジなんでね。自分の作品としてきちんとレコーディングしないままでしたから、もともとイメージしていた通りのスローで、この時期らしいアレンジで録りました」

        (伊藤銀次 自伝 MY LIFE POP LIFE)

 

 サウンドだけじゃなく、歌詞も変えています。一番と二番のAメロが違っているんですね。最初に彼が書いた歌詞に戻したのか、ソロ作品用に新たに書いたのかは不明ですが。

 

シュガー・ベイブ

”街はいつでも霧だらけ 泣き出しそうな灰色の空

ビルの谷間のガラスごし まぎれこんだアスファルトの海”

 

”あの路地裏を曲りこみ 誰に告げようつかの間の夢

外に出るのはやさしいけど 駆け出した時そこはもう街”

 

伊藤銀次

”街に今日も霧がふる 泣き出しそうな灰色の空

ヘッドライトがまたたく くすんだアスファルトの海”

 

”内緒話が聞こえる 覚めたコーヒーカップの音

今にもかけだしそうな 僕の心が足を止める”

 

 リズムのあるシュガー・ベイブの方は雨の街の中を動いているイメージ、スローな伊藤の方は雨の街を眺めているイメージですね。

 

  当時、正式に音源化されていたのは伊藤銀次だけだったのですが、当時のカバー・ヴァージョンは皆なぜか歌詞もアレンジもシュガー・ベイブのヴァージョンに基づいていました。ライヴだけだったとはいえ、関係者やファンに強い印象を残していたのかもしれません。

 

  まずは、竹内まりやのデビュー前のライヴ音源が収録されていることでも知られている1978年の「ロフト・セッションズvol.1」に収録されている高崎昌子のカバー。シティポップという観点からすると、この演奏は「こぬか雨」のカバーの中でも最高峰でしょう。

 

 *フルアルバムの動画なので、「こぬか雨」は4分36秒頃に始まります

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 そして、高崎のカバーに匹敵するシティポップ・アレンジは、アレンジャー清水信之の1980年リリースのファースト・アルバム「Corner Top」に収録されたもの。竹内まりやEPOがコーラスで参加しています。

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 1984年にはEPOがカバー。シュガー・ベイブ版の歌詞を、伊藤銀次に近いアレンジで歌っているのは、両方へのリスペクトをこめた意図的なものだったのでしょう。

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   日本の男性デュオ”Terry&Francisco”による2007年のカバー。これは伊藤銀次版。

 

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