まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「風のファルセット( IF I HAD MY WISH TONIGHT)」デヴィッド・ラズリー(1982)

 おはようございます。

 今日はちょっと地味目ですがデヴィッド・ラズリーを。

 1970年代から80年代前半にかけてルーサー・ヴァンドロスと並ぶ売れっ子男性バック・コーラス・シンガーとして知られ、ロバート・ジョンに匹敵する抜群のファルセット・ボイスの持ち主です。

 そんな彼のソロ・シンガーとしての唯一のヒット曲「風のファルセット」を。


David Lasley - If I Had My Wish Tonight (1982)

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Don't look at me
Cause I'm crying over you
Please don't look at me
My tears are fallin like water over a waterfall


Please don't talk to me
There's just nothin left to say
Please don't talk to me
My voice is shakin and I'm not
Makin much sense at all, 


I may never get over you but I'll try
Even if it takes my whole life through
Cause that's how long I'll cry


I wish I may I wish I might
Have this wish I wish tonight
So bad
Instead of being so sad and lonely
You would want me
If I had my wish tonight

Don't touch me again
Cause I'm dying over you
Please don't touch me again
I know your feelings are just not as real
As I hoped they'd be
Please don't look at me

 

I may never get over you but I'll try
Even if it takes my whole life through
Cause that's how long I'll cry


I wish I may I wish I might
Have this wish I wish tonight
So bad
Instead of being so sad and lonely
You would want me
If I had my wish tonight

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僕を見つめないで 君を想って泣いているから

どうか、僕を見つめないで 涙が滝みたいにに流れているんだ

 

どうか、話しかけないで もう言うことはないよ

どうか、話しかけないで 声が震えて

わけがわからなくなっているんだ 

 

君を忘れることなんかできないかも でもやってみるよ

たとえ一生涯かかったとしても

その間 泣き続けるから

 

もしかして できることならば

今夜この願いが叶うといいのに お願いだ

これほど悲しく、寂しくなるかわりに

君が僕を求めてくれればいいのに

もし、今夜願いが叶うなら

 

どうか、もう僕に触れないで

君のせいで死んでしまいそうになるから

どうか、もう僕に触れないで

君の気持ちは 僕が望んでいるものじゃないことは

わかっているから

どうか、僕を見つめないで

 

君を忘れることなんかできないかも でもやってみるよ

たとえ一生涯かかったとしても

その間 泣き続けるから

 

もしかして できることならば

今夜この願いが叶うといいのに お願いだ

これほど悲しく、寂しくなるかわりに

君が僕を求めてくれればいいのに

もし、今夜願いが叶うなら

 

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  男性バック・コーラスとしてルーサー・ヴァンドロスと双璧だったシンガーの唯一のヒット曲。

 

 ”If I had my wish tonight"「今夜願いが叶うなら」と言う意味ですが、彼のヴォーカルのイメージで邦題を「風のファルセット」にしたのでしょう。そして、ボビー・コールドウェルの「風のシルエット (What You Won't Do for Love)」のダジャレみたいになっているのも”狙い”だったんでしょうね。

 ただ、僕がこの曲を初めてNHKのFMで聴いた時には「今夜の願い」みたいな邦題がついていたように思うんですが、ネットでは確認できませんでした、、。

 

 最初にも書いた通り、彼はルーサー・ヴァンドロスと並ぶ男性バック・コーラス・シンガーの最高峰だったわけですが、彼もまたルーサーと同じように女性R&Bシンガーやグループばかり聴いていたそうです。

 ルーサーと同じくディオンヌ・ワーウィックアレサ・フランクリン、それにメリー・ウェルズ、そしてロネッツやクリスタルズなどが好きだったようです。

 両者ともに男性でいながらとても繊細な歌い回しをしますので、そういうルーツが大きく影響しているのかもしれませんね。

 

 彼は彼の妹ともう一人女性を加えたユートピアズ”というボーカル・グループを結成し1966年にデビューします。彼の地元がデトロイトに近いこともあって、モータウンの影響を感じさせる曲調でした。

 グループ解散後は、ミュージカルに出演していましたが、その後デトロイトに戻り、元ロカビリー・シンガーでモータウンのプロデューサーも経験していた、ジョニー・パワーズのプロデュースでソロのシングルをリリースすることになります。

 曲はキャロル・キング&ジェリー・ゴフィン作の「ワン・ファイン・デイ」(シフォンズ)でした。リリースは、ファルセット・コーラス・グループの最高峰”デルフォニックス”をリリースしていた”フィリー・グルーヴ・レコード”(配給はベル・レコード)でした。


David Lasley - One Fine Day - [7"] - 1973

 しかし、曲は売れなかったため、彼はニューヨークへ行きセッション・シンガーの仕事を探します。”ヴィレッジ・ボイス”に「デルフォニックスみたいな声の男性シンガー募集」という広告を見て応募すると、それはデイヴ・アペルのデモ・シンガーの仕事だったそうです。

 デイヴ・アペル。そうです、元トーケンズのハンク・メドレスとタッグを組んで、昨日このブログに登場した「幸せの黄色いリボン」(トニー・オーランド&ドーン)や、ロバート・ジョンの「ライオンは寝ている」をヒットさせたプロデューサーです。

  また彼はアレサ・フランクリンなどアトランティック・レコードで多くの名作を生んだアリフ・マーディンとも知り合いだったため、彼の仕事もどんどん来るようになったそうです。そして、フォーシーズンズのアレンジで知られるチャーリー・カレロも彼を指名するようになり売れっ子になっていきました。

 

  そして1975年には”ユートピアズ”と同じく女性2人とのトリオ”ロージー”を結成しアルバムを二枚リリースします。


ROSIE - THE WORDS DON'T MATTER Feat. DAVID LASLEY

 ロージーも成功することはできませんでしたが、彼はセッション・シンガーとしては引っ張りだこで、ジェイムズ・テイラーボニー・レイットの曲にも数多く参加しています。また”シック”には最初のレコーディングからルーサー・ヴァンドロスとともにコーラスで参加していて、大ヒットしたこの曲にも彼はコーラスで参加しています。


CHIC - Le Freak (Official Music Video)

 

 また彼はソングライターとしても才能を発揮させていきます。

 たとえば、ボズ・スキャッグスのこの曲は有名です。ボズのプロデューサー、ビル・シュネーの紹介だったそうでボズと二人で書いています。


Boz Scaggs - JoJo (Official Video)

 

 この「風のファルセット」も、彼と「辛い別れ」(アン・マレー)を書いたランディ・グッドラム、そしてデヴィッド・ロギンスと彼の3人で書き、最初にデヴィッド・ロギンスがレコーディングしリリースしていました。


David Loggins - If I Had My Wish Tonight

 彼がソロ・アルバムを作ることになり、自分で歌いたいということになったそうです。そして、ストリングス・アレンジはアリフ・マーディン、ミックス・エンジニアはビル・シュネー、コーラスにはボニー・レイットと、お世話になった彼のために、と大物が協力しています。

 

 それから、彼の曲で他に有名なのは、アニタ・ベイカーの大ヒットアルバム「ラプチチュアー」に収録されていた「You Bring Me Joy」でしょう。


You Bring Me Joy

 最後は、デヴィッドがソングライティングに参加した曲を盟友ルーサー・ヴァンドロスが見事に歌い上げた「CRAZY LOVE」を。1996年リリースの「ユア・シークレット・ラヴ」に収録されています。


Luther Vandross - Crazy Love

 

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