まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「17才の頃( At Seventeen)」ジャニス・イアン(1975)

 おはようございます。

 今日はジャニス・イアンの「17才の頃」を。


Janis Ian At Seventeen 17 Lyrics

  

 ”真実を学んだの 17歳のときに

   愛はミスコンの女王と、

   透き通る肌で笑顔を見せる

   女子高生のためにあるってことを

   彼女たちは若いうちに結婚して、リタイアするの

 

      ヴァレンタインなんて今まで知らなかったし

    金曜の夜に盛り上がるシャレードジェスチャー・ゲーム)だって

    また、きれいな子のために行われるんだわ

       17歳のときに 真実を学んだの

 

      社交的な魅力もなくて、顔もイケてない私たちは

   望みなく家に取り残されたまま、

      "一緒に踊りに行きませんか”と言って、

  遠回しにエッチな言葉をつぶやく

   そんな妄想の恋人と電話で話すふりをする

   見えていることだけが全部じゃないの 

  17歳のときは

 

       私がちゃんと発音できたことのない名前の

  いつもお下がりを着た茶色い目の娘が言った

  ”憐れみを どうか 奉仕する者たちに 

        だって、彼らは自分にふさわしいものしか

  手にできないから”

 

        金持ちと結婚した地元の女王は

  結婚して欲しいものを手に入れた

  セレブ仲間の保障と、

  高齢者になったときの隠れ場

 

  思い出して、ゲームに勝つ者は

  手に入れようとした愛を失うということを

  リスクの高い債務の中身と

  その疑わしい品格のせいで

 

  小さな町の人たちは、けだるい反応で驚きながら

  呆れた目で見るでしょう

  17歳で受け取れるはずのものの

       支払期限を超えてしまったときに

 

    ヴァレンタインなんて絶対に来ないという

  辛さを知る私たちと

  バスケットボールのチーム分けで

  名前を呼ばれなかった者たちへ

  

  それははるか昔、どこか遠い場所の話

  世界は今よりも若くて 

  私のようなみにくいアヒルの子にも

  夢が自由に与えられたころ

 

  みんなゲームをやっている 

  一人遊びで自分をごまかして

  恋人と電話で話すふりをして

 

  彼らは”一緒に踊りに行きませんか”と言ってきて

     遠回しにイヤらしい言葉をつぶやくの

  私のようにかわいくない子にも 

  17才の   ”(拙訳)

 

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I learned the truth at seventeen
That love was meant for beauty queens
And high school girls with clear skinned smiles
Who married young and then retired

The valentines I never knew
The Friday night charades of youth
Were spent on one more beautiful
At seventeen I learned the truth

And those of us with ravaged faces
Lacking in the social graces
Desperately remained at home
Inventing lovers on the phone
Who called to say "Come dance with me"
And murmured vague obscenities
It isn't all it seems
At seventeen

A brown eyed girl in hand-me-downs
Whose name I never could pronounce
Said, "Pity, please, the ones who serve
They only get what they deserve"

And the rich relationed hometown queen
Marries into what she needs
With a guarantee of company
And haven for the elderly

Remember those who win the game
Lose the love they sought to gain
In debentures of quality
And dubious integrity

Their small-town eyes will gape at you
In dull surprise when payment due
Exceeds accounts received
At seventeen

To those of us who knew the pain
Of valentines that never came
And those whose names were never called
When choosing sides for basketball

It was long ago and far away
The world was younger than today
When dreams were all they gave for free
To ugly duckling girls like me

We all play the game, and when we dare
To cheat ourselves at solitaire
Inventing lovers on the phone
Repenting other lives unknown

They call and say, "Come dance with me"
And murmur vague obscenities
At ugly girls like me
At seventeen

 

Writer/s: Janis Ian

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「17才の頃」楽譜はこちら

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 ジャニス・イアンはニューヨーク出身のシンガー・ソングライター

  1966年、まだ15歳のときにリリースしたシングル「ソサエティーズ・チャイルド( Sciety's Child)」が全米14位になります。白人の少女と黒人の少年の恋という、人種問題を内包した歌をまだ15歳の少女が歌うということで、大きな評判になりました。

 実際に彼女は当時黒人の方が多い地区の学校に通っていて、白人、黒人それぞれの親が子供達が付き合わないように神経をとがらせていて、それが自然に歌になったようです。


Janis Ian-Society's Child (1967)

  若くして、しかも衝撃的な歌でヒットしてしまった代償でしょうか、その後彼女はなかなか成功をつかめませんでした。

 その状況が変わったのは、1973年にロバータ・フラックが彼女の書いた「ジェシー」を取り上げ、全米19位まであがったことからでした。


Jesse

  そして1974年にアーティストとして新たにレコード会社と契約を結び、1975年にリリースしたこの「17才の頃」が全米3位の大ヒットになりました。

 

 この曲を書いた頃、彼女は一文無しで母親の家に戻っていました。そして、キッチンのテーブルにギターを持って座っていると、そこに置いてあった「ニューヨーク・タイムス」に初めて社交界にデビューする女の子の記事があって、タイトルが”I learned the truth at eighteen”(私は18才で真実を知った)とあったそうです。

 (記事自体は社交界にデビューすることに大した意味はないことを彼女は学んだというものだったそうです)

 この言葉が歌になりそうだと思ってギターを弾きながら曲を考え始めた彼女は、歌の韻律にうまくはまらないので18才(eighteen)を17才(seventeen)に変えました。

 曲の一番はあっという間にかけたそうですが、いいものになると確信した彼女は3ヶ月かけてじっくり仕上げたそうです。

 

   歌の内容は12才から14才くらいの自分の経験を反映させたそうです。この歌に出て来るプロム(高校最後のダンスパーティ)には彼女は行ったことはないそうですが、12才のとき(6年生)にダンスパーティの経験があって、そこからダンスに誘われない気持ちも理解できたので、それを歌詞に反映させたそうです。

 

 しかし、モテない女の子の歌と解釈するには、歌詞がとても難しいのがこの歌の特徴です。

 charade of youth 、ravaged faces、vague obscenities、debentures of quality、dubious integrityなど、今まで見たことのないような言葉がぞろぞろ出て来ます。

 

 ジャニス本人はこう語っています。

「これはとても言葉数の多い曲で、頭を使う必要があるわね。私も大勢の人たちが理解できるとは思わなかったわ。でもね、曲を書き上げた時、私にとっての初めてのヒット曲が書けた、と思ったわ」

 

 たぶん英語圏の人にも難しい表現が多いのだと思います。しかし、一貫したテーマとして”愛は可愛い子のためにあって、私みたいな可愛くない子のためにはない”ということを言っています。ポップソングでそこまで言い切った歌詞はなかったのではないでしょうか。

 

 そして、そんな痛みのある皮肉に満ちた歌詞がボサノヴァ調のとても洗練された雰囲気で歌われているというのが、この曲のミソだ僕には思えます。これで、マイナーキーのバラードだったら、かなり悲しい歌になるでしょう。

 

 この曲調なら、プロムに誘われず、バレンタインと縁のなかったことも、振り返れば悲しくはなるけれど、どこか割り切れるような。もちろん、僕は女性じゃないのでわかりませんが、、。

 

 英詞がダイレクトには入ってこない、僕には声、メロディ、サウンドが中心になって聴こえてくるので、切なくどこか心地よい曲目だと感じるのですが、英語圏の人にはもうちょっと違うニュアンスで聴こえるんだろうなあ、と想像したりします。

 

  さて、彼女はアメリカではほぼ「17才の頃」だけで知られる存在なのですが、日本では映画やドラマとたびたびタイアップしてヒットをいくつも出しています。

 

 日本での彼女の最大のヒット「ラブ・イズ・ブラインド(恋は盲目)」。TVドラマ「グッバイ・ママ」(1976)の主題歌としてオリコン1位。


ジャニス・イアン Janis Ian/恋は盲目 Love Is Blind (1976年)

 

  ドラマ「岸辺のアルバム」(1978)の主題歌「ウィル・ユー・ダンス」。

オリコン最高40位ですが、ドラマは社会現象になるほどのヒットでしたから、この曲の

認知度は高く、その後CMなどにも使われました

www.youtube.com

 映画「復活の日」(1980)の主題歌「ユー・アー・ラヴ」。オリコン最高10位。

www.youtube.com

 

 「17才の頃」を収録した全米1位獲得のアルバム

Between the Lines

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  • アーティスト:Ian, Janis
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「17才の頃」「恋は盲目」「ウィル・ユー・ダンス」「ジェシー」などを収録した彼女のベスト・アルバム

The Essential 2.0

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ジャニス・イアン作曲の名曲

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