まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ヴィーナス(Venus)」ショッキング・ブルー(1969)

 おはようございます。

 今日はショッキング・ブルーの「ヴィーナス」


Shocking Blue - Venus (Official Video)

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A godness on a mountain top
Was burning like a silver flame
The summit of beauty and love
And Venus was her name

She's got it
Yeah, baby, she's got it
Well, I'm your Venus
I'm your fire, at your desire
Well, I'm your Venus
I'm your fire, at your desire

Her weapons were her crystal eyes
Making every man mad
Black as the dark night she was
Got what no-one else had
Wow!

She's got it
Yeah, baby, she's got it
Well, I'm your Venus
I'm your fire, at your desire
Well, I'm your Venus
I'm your fire, at your desire

She's got it
Yeah, baby, she's got it
Well, I'm your Venus
I'm your fire, at your desire
Well, I'm your Venus
I'm your fire, at your desire

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  ”山頂にいる女神は 暗闇を照らすように銀色に燃えている

  美と愛の頂点  彼女の名はヴィーナス

  

      彼女はわかっている そうわかっている

   私はあなたのヴィーナス 

      あなたの炎 欲望に火をつけるの

   私はあなたのヴィーナス

   あなたの炎 欲望に火をつけるの

 

  彼女の武器は水晶の瞳

  全ての男を狂わせる

  深い闇夜のように黒く

  他の誰も持っていないものを持っている

 

  彼女は持っている そう持っているんだ

  私はあなたのヴィーナス 

       あなたの炎 欲望に火をつけるの

      私はあなたのヴィーナス

     あなたの炎 欲望に火をつけるの  "               (拙訳)

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  発売から50年以上経つのに今だによく耳にする、インパクトのとても強烈な曲です。 

 歌っているショッキング・ブルーはオランダのバンドでした。曲を作ったのはメンバーのロビー・ファン・レーベン。実は「ヴィーナス」を書くにあたって彼が参考にした曲がありました。 

    キャス・エリオットがママス&パパスに参加する以前に組んでいた”the Big 3”というグループの「バンジョー・ソング」。フォスターの「おおスザンナ」にメンバーのティム・ローズが新たにメロディーをつけた曲です。

 


Big 3 - 1963 - The Banjo Song

  

 なぜ、オランダの曲が世界中でヒットすることになったのでしょう?

その仕掛け人が昨日このブログで登場したジェリー・ロスなんです。ボビー・ヘブの「サニー」やキース「98.6」のプロデューサーですね。

 彼はヨーロッパのアーティストのアメリカ発売の権利を買いに、奥さんとセールス・マネージャーと渡欧していました。大抵の場合はイギリスとドイツくらいしか行かないのですが、彼らはアムステルダムにも向かいました。

    *話は脱線してしまいますがジェリーの奥さんは、エイプリル・ヤングという名前でシンガーをやっていました。ジェリーのプロデュースで素敵なポップスを歌っています。


April Young - Gonna Make Him My Baby

 

 そして、ジェリーたちが地元の業者とアメリカン・スタイルのダイナーでランチを食べていると、それまでアレサ・フランクリンなどアメリカのR&Bがかかっていた店内のジュークボックスからこの「ヴィーナス」の強力なギター・リフが流れてきたそうです。

 すぐに魅了された彼は、店長に歌っているアーティストと曲名を聞き出し、彼はすぐにメンバーと会い契約を結び、アメリカで発売する権利を獲得したそうです。

 

 そのあと、彼はドイツのハンブルグに行き、またもジューク・ボックスから流れる曲に興味を持ちます。それが、ティー・セットというグループの「マ・ベラミ」で、やはりオランダのグループだったと知り、彼はあわててアムステルダムに戻って彼らとも契約しました。


TEE-SET - MA BELLE AMIE

 ジェリー・ロスは、権利を獲得したオランダのアーティストをアメリカで発売するために、新たなレコード会社”コロッサス(Colossus)”を発足させます。コロッサスは元々ロードス島似合った巨像や、第二次大戦でイギリスが使った暗号解読機などの意味がありますが、実はジェリーが飼っていたミニチュア・プードルの名前だったそうです。

 ”コロッサス”から発売された「ヴィーナス」は全米1位、「マ・ベラミ」も全米5位と大成功を収めました。

 そしてジェリーがオランダで見つけたアーティストがもう一組いて、その曲が今の日本では一番耳にするものだと思います。

 それが、ジョージ・ベイカー・セレクションの「リトル・グリーン・バッグ」です。


George Baker- Little Green Bag

   この全米で立て続けにヒットしたオランダ勢を、ビートルズ時代の”ブリティッシュ・インヴェイジョン”になぞらえて、”ダッチ・インヴェイジョン”という呼び方が当時はあったようです。

 

 ジェリー・ロスという人は、本来、曲も書けて、ものすごくセンスのいいポップスを作り出す名人でもあるわけですが、こういう”目利き”としても優れていたわけで、自分の足を使っていい曲、いいアーティストを掘り起こすことも積極的だった、まさに理想の”ミュージック・マン”だなと、すごくリスペクトしてしまいます。

 

 ショッキング・ブルーはこの次のシングル「マイティ・ジョー」は全米43位と振るわずアメリカでは”一発屋”の範疇に入りそうですが、日本では”二発屋”なんです。

「悲しき鉄道員」と言う曲が大ヒットしています。(オランダ、フランスでも大ヒット。チャートで第1位になっています)

www.youtube.com

”Never marry a railroad man
He loves you every now and then
His heart is at his new train” 

鉄道員と結婚しちゃダメ 時々は愛してくれるわ 彼の心は新しい列車にあるのよ)

なかなか、面白い視点の歌ですね。

 

 さて、この「ヴィーナス」に関しては、この決定的なカバー・ヴァージョンが生まれることで、この曲の寿命はグンと伸びたんじゃないでしょうか。

 1980年代のユーロビート・ブームを生んだプロデューサー・チーム”ストック・エイトキン・ウォーターマン”が初めてバナナラマと組んで作った作品(1986年)。「ヴィーナス」をカバーするというアイディアは、バナナラマが彼らに提案したものだったそうです。


Bananarama - Venus (Official Video)

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