おはようございます。
今日は「バチェラー・ガール」。”雨のポップス”の名手、大瀧詠一の作品(作詞は松本隆)。歌うのは「雨のリグレット」でデビューし「ドラマティック・レイン」で大ブレイクした”雨男”(この後は雨の歌がほとんど聴かれなくなりましたが)稲垣潤一です。
この曲は稲垣潤一が1985年7月にシングル・リリースしているのですが、同じ年の11月に大瀧本人もシングル・リリースしています。しかも、レコーディングしていたのは大瀧の方が先でした。
この曲は大瀧がアルバム「EACH TIME」のためにレコーディングした3曲めの曲で、本人もシングルはこれだと思ったと言います。
しかし、作詞をした松本隆がクリフ・リチャードの「バチェラー・ボーイ」を比喩的に変えた「バチェラー・ガール」というタイトルが、英語的におかしくないか疑問に思った彼は外国人に確認すると、”バチェラー(独身男性)”は男性につく言葉だからおかしい、と言われたそうです。
「譬えだからいいじゃない、という思いもあったけど今までの作品でここまで引っかかったもので出したものはないの。<バチェラー・ガール>はタイトルだからね。どっかにお墨付きがないと出せなかったの。84年3月の時点で出来上がってはいたんだけど、入れなかった。」
(レコード・コレクターズ増刊 大滝詠一Talks About Niagara)
ちなみに、クリフ・リチャードの「バチェラー・ボーイ」とはこんな曲です。
CLIFF RICHARD - Bachelor Boy 1963
父親からの「バチェラー・ボーイ(独身)でいなさい」という言いつけを守る男の歌です。結局は結婚して幸せになるというオチがつきますが。
こうして、”シングル第一候補曲”を入れずに「EACH TIME」は完成しリリースされ、シングル・カットされた曲のないまま、アルバムチャート1位になりました。
しかし、依然として「バチェラー・ガール」が頭の中にあった大瀧は古いハリウッド映画で「バチェラー・マザー」という作品があったことを発見します(1939年のジンジャー・ロジャースとデヴィッド・ニーヴンが出演するロマンティック・コメディです)。
これなら、比喩として<バチェラー・ガール>とつけたって言い返せるから問題ないと彼は思ったそうです。
「それでそのころ中央高速を<バチェラー・ガール>を聴きながら走っていたら突然、稲垣潤一の声で聞こえてきたのよ。これは稲垣にいいだろうと思って、車から出版社に電話した。親近感持ってたしね、彼には。」
(レコード・コレクターズ増刊 大滝詠一Talks About Niagara)
作った本人が自分が歌っているのを聞いて、”稲垣潤一の声”で聞こえてきたというのは、凄いことですね。単なるカバーじゃないわけです。
そして稲垣のヴァージョンも、大瀧と同じく井上鑑のアレンジで制作されました。
ちなみに、大瀧のヴァージョンのほうは、ここ連日紹介している多くの雨の曲同様、雨と雷のS.Eから始まっています。
最後に恒例ですが、元ネタ探検隊(?)。Aメロはメロディここからきているようです。
Stay And Love Me All Summer - Brian Hyland
ブライアン・ハイランドは「ビキニスタイルのお嬢さん」で知られるシンガー。
この「Stay And Love Me All Summer」は1969年のシングル。全米82位と小ヒットでした。
Aメロのメロディ・ライン自体はかなり一緒ですが、コードがメジャーかマイナーかで結構印象が変わります。あとリズム・パターンも。そういう意味では、全体的なトーンとしてはこの曲のイメージがあったのでしょう。王道ですが。(あと他にもたくさんの曲の要素が入っているのでしょうが、僕にはわかりません、、、、)
それでは最後は作者の大瀧詠一のヴァージョンをどうぞ。