おはようございます。
今日は坂本慎太郎の「まともがわからない」です。
Shintaro Sakamoto (坂本慎太郎) - まともがわからない
これはTV。三浦しをんの原作をドラマ化したドラマ「まほろば駅前番外地」のエンディング・テーマで、便利屋を営む瑛太と松田龍平が毎回様々な依頼者からの仕事を引き受けていくと何らかの事件になる、という話でした。
「傷だらけの天使」をルーツとする”バディ(相棒)もの”ですが、ショーケンのようにギラギラしてなく、ゆるくナチュラルで、それが今風なんだろうなあなどと思いながら見ていました。
そして、この「まともがわからない」がその空気感に見事にフィットしていました。
大野克夫、ショーグン、クリエーションなどのように、かつてのこの手のドラマには都会的で粋なテーマソングは必須なわけですが、「まともがわからない」もその系譜を感じさせながらも、余計な力が抜けていて、でもなんかモヤモヤしているような、そんな感じが絶妙に思えました。
またこの曲を作って歌っているのが、元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎ということに驚きました。ゆらゆら帝国というと、カルトでマニアックなイメージが強かったので、、。
あらためて聴いてみると、ポップさや歌謡性のようなものは元からしっかりあったのかもしれないですね。
ソロになってからはけっこうポップなアプローチが出てきますが、「まともがわからない」はTVドラマ用という前提で作ったものなので彼のレパートリーの中では異色なのでしょう。その後は、これほど明快なポップスは作っていませんし。
( 以前このブログでシティポップの名曲、野口五郎の「グッドラック」を彼がカバーしているのを紹介しましたが、アレンジはシティ・ポップではありませんでした)
ネットで見つけたインタビューで”ポップスを定義するとしたら?”という興味深い質問に彼はこう答えています。
「みんなで共有するものっていうようなイメージがあるかもしれないですね。作ってる人とか歌ってる人がいて、それを聴いてる人がいて、その中間に位置してるような感じ。僕が好きなのもそういう感じのものだったりしますね。曲だけがあって、それをいろんな人が自分の解釈で共有できて、作ってる人の情念みたいなものももちろん入ってるんですけど、ちょっと距離があるというか」
(チケットぴあ 坂本慎太郎100Q 100問突撃インタビュー)
ポップスはみんなで共有するもの。まさに、その通りだと思います。
山下達郎が”大衆に奉仕するもの”だと言ったり、松任谷由実が自分の曲について将来”詠み人知らず”になって曲だけ残っているのが理想だと、語ったりするのもそういうことなのでしょう。
しかも彼は、僕が好きなのもそう言う感じのものだったりする、とも言っています。
また別のインタビューでは、自身の考えるロックについて
「歪んだギターとか激しいリズムとか、そういうのじゃないんですよね。もっと切実なものとスウィートなものが合体してるみたいな」(REAL SOUND)
と語っています。
彼は、音楽の外面ではなく内側にある、目に見えないものすごく純化されたもの、そのエッセンスを常に探しているのかもしれません。
彼な歌詞も実に平易でいたって何気ない感じはするのですが、これ以上ないくらいに飾りを落とし、ギリギリまで本心に近い言葉を入念に選んでいるんじゃないか、という印象があります。
純度の高いエッセンスを追求し続けるからこそ、大衆的なヒットは生まれず、そのかわりに、海外からも大きく支持されていることにつながっているように思います。
最後にもう1曲、このMVは彼が描いて作ったそうです。
君はそう決めた ( You Just Decided ) / 坂本慎太郎 ( zelone records official )