まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ピープル・ゲット・レディ(People Get Ready)」ジェフ・ベック&ロッド・スチュワート(1985)

 おはようございます。

 今日はカーティス・メイフィールドが残した名曲「ピープル・ゲット・レディ」。

 まずは日本でこの曲を有名にしたロッド・スチュワートとジェフ・カバー。僕もこのバージョンでこの曲を知りました。


Jeff Beck, Rod Stewart - People Get Ready (Official Video)

  そして、この曲のオリジナルはカーティス・メイフィールドが在籍していたインプレションズ、1965年にリリースされました(全米14位、R&Bチャート3位)。


"People Get Ready" The Impressions

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People get ready, there's a train a-comin'
You don't need no baggage, you just get on board
All you need is faith to hear the diesels hummin'
Don't need no ticket, you just thank the Lord

So, people get ready for the train to Jordan
Picking up passengers coast to coast
Faith is the key, open the doors and board 'em
There's hope for all among those loved the most


There ain't no room for the hopeless sinner
Who would hurt all mankind just to save his own, believe me now
Have pity on those whose chances grow thinner
For there's no hiding place against the kingdom's throne

So, people get ready, there's a train a-comin'
You don't need no baggage, you just get on board
All you need is faith to hear the diesels hummin'
Don't need no ticket, you just thank the Lord

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 ”みんな準備しよう 汽車が来る

   荷物はいらない ただ乗り込めばいい

     ただ信じる心があれば ディーゼルの音は聞こえる

   切符だっていらない ただ神に感謝するだけでいい

 

   みんな準備しよう ヨルダン行きの汽車がきた

   国中あちこちから 乗客を乗せて

   信じる心が鍵だ ドアを開けて、乗り込もう

   最も強く愛されたものたちには希望があり

   自分だけが助かろうとして 人類に害を与えるような

   望みのない罪人のための場所はない

   憐れに思う 機会を失いそうな彼らを

   神の玉座から隠れる場所はないんだ

 

      だから、みんな準備しよう 汽車が来る

   荷物はいらない ただ乗り込めばいい

     ただ信じる心があれば ディーゼルの音は聞こえる

   切符だっていらない ただ神に感謝するだけで”  (拙訳)

 

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「ピープル・ゲット・レディ」の楽譜はこちら

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 これはカーティス・メイフィールド自身の教会の経験や牧師のメッセージがもとになっていて、曲を書いた時に彼は宗教的なインスピレーションに深く入り込んでいた状態だったと語っています。

 また、この曲は、アフリカ系アメリカ人公民権運動でリーダー・シップをとったマーティン・ルーサー・キング牧師が「私には夢がある」という演説を行ったことで有名な”ワシントン大行進”の影響があるとも言われていて、その後、公民権運動の集会で歌われたこともあったそうです。

 

 僕は教会や宗教的な信仰心とは縁が薄い人間ですし、アフリカ系アメリカ人の人たちの歴史や思いもリアルに感じることはできません。しかし、この歌には昔から不思議と強く心を惹きつけられるものがあります。

 

   この曲を聴いていると自分のことばかりで凝り固まっていた頭が、ふと同じ世界に生きてさまざまな境遇にいる人たちにまで思いが広がっていく気がします。コロナ渦の今のような時期には、この曲の求心力は特に強まるようにも思えます。

 

 動画サイトを見ると、ボブ・ディランブルース・スプリングスティーン、スティング、U2などたくさんのアーティストが歌っていてるのを見ることができて、歌う人に左右されない”歌としての本質的な力”があることに気づかされます。

 

 この曲をかなり早いタイミングでカバーした白人ロック・バンドがバニラ・ファッジです。


People Get Ready

 そして、このバンドのドラムス、カーマイン・アピスとベースのティム・ボガートのリズム・セクションに惚れ込んだのが、ジェフ・ベックでした。

 

 彼は、ベック、ボガート&アピスというグループを組み、R&B好きのカーマインの提案でカーティス作のインプレッションズの「I'm So Proud」という曲をカバーしています(1968年)。


Beck, Bogert & Appice - I'm So Proud - 09

 3人の活動は短かったですが。ジェフとカーマインの交流は続いていて、あるときカーマインの家に来ていたジェフが一緒に何か作ろうと言い出したことがあったそうです。

 

 そして、カーマインが仲間のソングライターのデュアン・ヒッチングスの家にスタジオがあるからそこで作業をしようと提案し、3人で最終的に「ピープル・ゲット・レディ」をやることにして、アレンジを詰めていったそうです。そして、アレンジが出来上がった時に、ジェフが「これを歌えるすごいボーカリストが必要だな』と言い出し、カーマインが「例えば誰?」と聞くと、ジェフは「ロッド」と答えたと言われています。

 カーマインとデュアンがロッドと一緒に仕事をしていたときに、ジェフに引き合わせたことがきっかけで二人は友人になっていました。

 そして、ロッドが夕食をとっている店を知り合いから聞き出し、彼らは「ピープル・ゲット・レディ」のデモの入ったカセットを持ってその店に向かったそうです、、。

 ちなみに、ロッド、カーマイン、デュアンの3人で作った曲はこれですね。


www.youtube.com

 

 つまり、「アイム・セクシー」を作ったチームにジェフ・ベックが加わってできたのがこの「ピープル・ゲット・レディ」のカバーなんですね。なんだか、曲のギャップが激しすぎますが、、。

 

 ロッドとベックの「ピープル・ゲット・レディ」を生んだ中心人物はカーマイン・アピスだったわけで、遡れば17年前のバニラ・ファッジのカバーに結びつくわけです。

 

 それから、日本公演でカーマインはヴァニラ・ファッジ・ヴァージョンとベック&ロッド・ヴァージョンの2種類を演奏したことがあったそうです。

 

   

   最後はカーティスがソロでやっているヴァージョンを。なんだかんだ言っても、これが一番しっくりします。

 


Curtis Mayfield - People Get Ready - #8

 

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