おはようございます。
今日はイギリスで初めてア・カペラでNO.1ヒットになった曲です。
ウォン・カーウァイ監督の1995年の映画「天使の涙」でも効果的に使われていましたね。
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Looking from a window above
It's like a story of love
Can you hear me?
Came back only yesterday
I'm moving farther away
Want you near me
All I needed was the love you gave
All I needed for another day
And all I ever knew
Only you
Sometimes when I think of her name
When it's only a game
And I need you
Listen to the words that you say
Getting harder to stay
When I see you
All I needed was the love you gave
All I needed for another day
And all I ever knew
Only you
All I needed was the love you gave
All I needed for another day
And all I ever knew
Only you
This is going to take a long time
And I wonder what's mine
Can't take no more
Wonder if you'll understand
It's just the touch of your hand
Behind a closed door
All I needed was the love you gave
All I needed for another day
And all I ever knew
Only you
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高い窓から見てみると
まるでラブ・ストーリーみたいさ
僕の声が聞こえるかい?
つい昨日戻ってきたというのに
今はどんどん遠ざかっている
君がそばにいてほしい
僕に必要だったは君がくれた愛だけ
僕に必要だったのはあともう1日
そして僕にわかることは、ただ
君しかいない
時々、彼女の名前を思い出すとき
それがただのゲームだとしても
君が必要なんだ
君が話す言葉を聴くと
ここに居辛くなってくる
君を見ていると
僕に必要だったは君がくれた愛だけ
僕に必要だったのはあともう1日
そして僕にわかることは、ただ
君しかいない
僕に必要だったは君がくれた愛だけ
僕に必要だったのはあともう1日
そして僕にわかることはただ
君しかいない
長く時間がかかるだろう
そして、僕は何を手にしているんだろう
これ以上我慢できない
君はわかってくれるだろうか
ただ君の手に触れたいだけなんだ
閉じたドアの向こうにいる君の
僕に必要だったは君がくれた愛だけ
僕に必要だったのはあともう1日
そして僕にわかることは、ただ
君しかいない
(拙訳)
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フライング・ピケッツは役者のブライアン・ヒバートが、1982年に芝居でア・カペラを歌うために結成したグループ。グループ名は、各地のストライキに駆けつけてスト破りを監視したりする人、というような意図があるようで、彼らの政治意識が反映したものだと言われています。
(この曲の収録された彼らのアルバムで、ブルース・スプリングスティーンの「ファクトリー」という労働者の歌をア・カペラでカバーしていて意外だったのですが、それも彼らの意思表明でもあったのかもしれません)
1986年にブライアンは脱退しますが、その後もメンバーを入れ替えて長く活動していたようです。
さて、この曲のオリジナルは彼らではなく”YAZOO"(ヤズー)というグループで、前年の1982年にイギリスで最高2位まで上がる大ヒットになりました。
ヤズーはクリエイターのヴィンス・クラークとボーカルのアリソン・モイエのユニット。ヴィンスはイギリスのロック・バンド「ディペッシュ・モード」の創立メンバーでしたが、ツアーとプロモーションがいやになり脱退するのですが、その直前に彼が作ったのがこの「オンリー・ユー」でした。他のメンバーに聴かせたのですが、却下されてしまったそうです。
そして、彼はこの曲に合うシンガーを探して見つけたのがアリソンでした。彼女はヴィンスの知り合いのギタリストがいるバンドで歌っていたので、彼は彼女の歌をすでに聴いたことがあり、そのとき音楽雑誌に彼女がバンド募集の記事を載せていたのを見たそうです。そして、彼女に歌わせたところぴったりだったようです。
もともと「オンリー・ユー」という曲をやるためだけにに出来たのが”ヤズー”だったわけです。そして、「オンリー・ユー」の評判が良かったので、アルバムまで作りユニットとして活動したわけです(わずか2年間で解散してしまいますが)。
僕はこの曲を初めて聴いた時に、古いスタンダードをエレクトリック・ポップでカバーしたものだと勝手に思い込んでいました。それだけ、この曲がシンプルでわかりやすいものだったからです。
ヴィンスはその後のインタビューで、この曲はサイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」に影響を受けて書いたと語っています。
ギターを弾きながら、シンプルなメロディで、控えめだけど気持ちが上がるようなコーラス、そして歌詞は詩的になるように望みながら、書いたそうです。
歌詞の恋愛観、恋愛に関する距離感のとり方などを見ても、この曲は本来ナイーヴな男性が合う歌だと思います。
ナイーヴでヒューマンなフライング・ピケッツのほうが、本来の歌の世界をよく反映しています。でも、こちらのヴァージョンが先に世に出たらこれほどの大ヒットにはならなかったとも思います。
とにかく派手で賑やかだった1980年代のヒットチャートの中ではおとなしく響いたと思うからです。
無機質なエレクトロ・サウンドで力強い女性ヴォーカル、という歌の世界とは真逆に振り切ったヤズーだからこそ目立ったんじゃないでしょうか。
そして、ヤズーが大ヒットして間もなく、この曲の本質をついたフライング・ピケッツのヴァージョンが出てきた、このタイミングは絶妙だったと思うんです。
さて、2016年にアリソン・モイエがバーバリーのファッションショーでこの曲を歌う映像がアップされています。イギリスではスタンダード曲なんですね。