まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「サークルズ(Circles)」ポスト・マローン(2019)

 おはようございます。

 今日はポスト・マローンの「サークルズ」を。


Post Malone - Circles (Official Audio)

 

We couldn't turn around 'til we were upside down
I'll be the bad guy now, but know I ain't too proud
I  couldn't be there even when I tried
You  don't believe it, we do this every time


Seasons change and our love went cold
Feed  the flame 'cause we can't let go
Run away, but we're running in circles
Run away, run away
I dare you to do something
I'm  waiting on you again, so I don't take the blame
Run away, but we're running in circles
Run away, run away, run away


Let go, I got a feeling that it's time to let go
I said so, I knew that this was doomed from the get-go
You thought that it was special, special
But it was just the sex, though, the sex, though
And I still hear the echoes (The echoes)
I got a feeling that it's time to let it go, let it go


Seasons change and our love went cold
Feed the flame 'cause we can't let go
Run away, but we're running in circles
Run away, run away
I dare you to do something
I'm waiting on you again, so I don't take the blame
Run away, but we're running in circles
Run away, run away, run away

Maybe you don't understand what I'm going through
It's only me, what you got to lose?
Make up your mind, tell me, what are you gonna do?
It's only me, let it go


Seasons change and our love went cold
Feed the flame 'cause we can't let go
Run away, but we're running in circles
Run away, run away
I dare you to do something
I'm waiting on you again, so I don't take the blame
Run away, but we're running in circles
Run away, run away, run away

 

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僕らはめちゃくちゃになるまで方向転換できなかった
今、僕は悪者になろう だけど僕はプライドが高いわけじゃない
そうしようとしたど、そこにはいられなかった
君はそれを信じない  僕らはいつだってこうさ


季節が変われば愛も冷める
火をくべるのは手放せないから
逃げても僕らは同じ環の中を走っている
逃げても、逃げても
君は何かやってみてよ
僕はまた君が何かするのを待っている、だから責任は取らない
逃げても僕らは堂々巡りするだけ
逃げても、逃げても、逃げても


手放そう、手放す時が来た気がする
そうさ、僕は最初から終わる運命だとわかってた
君は特別、特別だと思ってた
でも、それはただのセックス、だけど、セックスだった、だけど
そして今も僕にはそのエコーが聞こえる
僕は手放す時が来た気がする

 

季節が変われば愛も冷める
火をくべるのは手放せないから
逃げても僕らは同じ環の中を走っている
逃げても、逃げても
君は何かやってみてよ
僕はまた君が何かするのを待っている、だから責任は取らない
逃げても僕らは堂々巡りするだけ
逃げても、逃げても、逃げても

 

たぶん君は僕の気持ちがわかっていない
僕だけなんだ、君は何を失うんだ?
心を決めるのさ、さあ、君はどうする?
僕だけなのさ、手放そう

 

季節が変われば愛も冷める
火をくべるのは手放せないから
逃げても僕らは同じ環の中を走っている
逃げても、逃げても
君は何かやってみてよ
僕はまた君が何かするのを待っている、だから責任は取らない
逃げても僕らは堂々巡りするだけ
逃げても、逃げても、逃げても

                       (拙訳)

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 今の日本での米津玄師にあたるようなアーティストって、アメリカでは誰だろう?とふと考えたときに浮かんできたのが彼でした。音楽性ではなく、完全にネット時代になった音楽シーンの新しい象徴となる存在、というような意味ですが。

 

 彼の本名はオースティン・ポスト。14歳のときに何をするのかがカッコイイか考えたときに、曲を作って芸名をつけることを思い立ったそうです。しかし、いいアイディアが思い浮かばず、「ラップ・ネーム・ジェネレイター」というラッパー名を自動で考えてくれるサイトに入力して出てきたのが”ポスト・マローン”だったといいます。

 

(そういうサイトはいくつかあって僕も試しにやってみたら、いろいろ候補が出てきたのですが、その中でただ僕の名前を変換しただけの<Kat$umi>というのがいかにもラッパーっぽくて気に入りましたw、、)

 

 

 高校を落第してしまっていた彼は、ユーチューバーの友達がゲーマーの友達と一緒にLAに移住すると聞いてついていくことにします。友達の家に居候しながら、ギターのゲーム「ギターヒーロー3」を極めていくうちに本物のギターを弾くようになり、ヒップホップにもハマっていったようです。

 無一文で何もしていなかった彼は自分の状況変えるために「White Iverson」という曲を作りネットにアップします。

 NBAのレジェンド、アレン・アイヴァーソンのような髪型で、俺は白いアイヴァーソンだ、コートで暴れて、大金稼いで女をはべらかせて、、とバスケ好きの妄想をラップしているこの曲は大きな反響を呼び、大物ラッパーたちからどんどん声がかかるようになったそうです。

 


Post Malone - White Iverson

  ラップとはいっても少し歌うようなニュアンスもあるスタイルですよね。そして、彼はボーカリストとしての魅力も徐々に発揮していくようになります。

 

 そして彼が多くの支持を集めていった大きなポイントは、何よりも社会的に認められていないオタクの若者の感情を率直に歌っていたところじゃないかと思います。

 

 例えば「Myself」という曲で彼は

アメリカン・ドリームを信じることにもううんざりしてる どうでもいいんだ”

と歌っています。

 

 外見はタトゥーだらけで、ぱっと見怖そうですが、目の下のタトゥーは

”Always Tired”(いつも疲れてる)なんて彫られています。

 

 ストリートのバッドボーイ風のラッパーではなく、今の大多数の若者と”ネットオタク、ゲームオタク”の象徴として支持されているんだろうなと思います。

 

 そして、いかにもネットオタク、ゲームオタクらしいスタンスで、様々なジャンルの音楽を雑多に楽むミクスチャー感覚が彼の音楽にもはっきりと反映されています。

 だからこそ、ネットでランダムに音楽を聴くことが当たり前の習慣になっている若いリスナーたちに彼の音楽はすごくフィットして感じられるのでしょう。

 

 それから、あるインタビューで

 ”ヒップホップとギターソングを同時に作るのは不可能だと言われているけど、それをやるのが白人の自分にとっては大きな挑戦だ”

 

と、彼は語っていたことがありますが、この「サークルズ」は、ヒップホップとクラブ・ミュージックに1970年代のギター・ロックが混在しているような楽曲です。

 

 YouTubeにはこの曲のアコギの弾きかたを教える動画が多くアップされ、バンドでカバーしているものもあります。ギター・ロック、アコースティック・ロックとも受け止められているのでしょう。

 (ちなみに僕はこの曲の、ベースのラインが好きなんですが、やはりベースのカバーの動画もいくつかアップされてました)

 

 アコギでカバーされるような曲をやるヒップホップのアーティストは今までいなかったでしょう。彼は、ヒップホップとギター・ソングを同時に作るという野望をこの曲で実現させたのかもしれないですね。

 ポップ・ミュージックは遥か昔から、その時代その時代の様々な音楽のミクスチャーでもあったわけですが、そう考えると、これからの時代の”ポップ”は彼のようなアーティストが生み出していくのかもしれないな、と僕は思います。

 

 この曲のライブ・パフォーマンスのどうがをご紹介します。

 やはり、今までにいなかったタイプのアーティストだというのがわかる気がします。


Post Malone - "Circles" (Live on the Runaway Tour)

 

 

*追記(2024/01/12)2022年9月にアップされた「サークルズ」のアコギ弾き語り動画がありますので、こちらもぜひご覧ください。

www.youtube.com

Circles

Circles

  • アーティスト:ポスト・マローン
  • 出版社/メーカー: Republic Records
  • 発売日: 2019/08/30
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

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