まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「サークルズ(Circles)」ポスト・マローン(2019)

 おはようございます。

 今日はポスト・マローン。


Post Malone - Circles (Official Audio)

 

 ”季節は変わって、愛は冷えきってゆく

 でも、手放せなくて、火をくべる

 この状況から抜け出したい 

 なのに、いつも同じ環(サークル)をぐるぐる回っているだけ”(拙訳)

 

 今の日本での米津玄師にあたるような、アメリカのアーティストは誰だろう?と考えたときに浮かんだのは彼でした。音楽性というより、音楽シーンの新しい象徴となる存在、というような意味ですが。

 彼の本名はオースティン・ポスト。14歳のときに何をするのかがカッコイイか考えたときに、曲を作って芸名をつけることを思い立ったそうです。しかし、いいアイディアが思い浮かばず、「ラップ・ネーム・ジェネレイター」というラップ名を自動で考えてくれるサイトに入力して出てきたのが”ポスト・マローン”だったといいます。

 高校を落第してしまっていた彼は、ユーチューバーの友達がゲーマーの友達と一緒にLAに移住すると聞いてついていくことにします。友達の家に居候しながら、ギターのゲーム「ギターヒーロー3」を極めていくうちに本物のギターを弾くようになり、ヒップホップにもハマっていったようです。

 無一文で何もしていなかった彼は自分の状況変えるために「White Iverson」という曲を作りネットにアップします。

 NBAのレジェンド、アレン・アイヴァーソンのような髪型で、俺は白いアイヴァーソンだ、コートで暴れて、大金稼いで女をはべらかせて、、とバスケ好きの妄想をラップしているこの曲は大きな反響を呼び、大物ラッパーたちからどんどん声がかかるようになったそうです。

 


Post Malone - White Iverson

  ラップといっても少し歌うようなニュアンスもあるスタイルで、彼はボーカリストとしての魅力も徐々に発揮していくようになります。

 

  しかし、何よりも社会的に認められていないオタクの若者の感情を率直に歌っているところが広く支持されているポイントじゃないかと思います。

 例えば「Myself」という曲で彼は

アメリカン・ドリームを信じることにもううんざりしてる どうでもいいんだ”

と歌っています。

 

 外見はタトゥーだらけで、ぱっと見怖そうですが、目の下のタトゥーは

”Always Tired”(いつも疲れてる)なんて彫られています。

 そういうところも、ネットオタク、ゲームオタクの象徴、すなわち今の大多数の若者の象徴として支持されている理由なのかもしれません。

 

 そして、ネットオタク、ゲームオタクらしいスタンスで、様々なジャンルの音楽を雑多に楽むミクスチャー感覚が備わっている、そしてそれが音楽に反映されています。そして、それが、ネットでジャンルに関係なくランダムに音楽を聴くことが習慣になっている若者には、自然なものとして受け止められているのでしょう。

 

 ”ヒップホップとギターソングを同時に作るのは不可能だと言われているけど、それをやるのが白人の自分にとっては大きな挑戦だ”と、彼は語っていたことがありますが

   この「サークルズ」は、ヒップホップとクラブ・ミュージックに1970年代のギター・ロックが混在しているような楽曲です。

 YouTubeにはこの曲のアコギの弾きかたを教える動画が多くアップされ、バンドでカバーしているものもあります。ギター・ロック、アコースティック・ロックとも受け止められているのでしょう。

 (ちなみに僕はこの曲の、ベースのラインが好きなんですが、やはりベースのカバーの動画もいくつかアップされてました)

 アコギでカバーされるような曲をやるヒップホップのアーティストは今までいなかったでしょう。彼は、ヒップホップとギター・ソングを同時に作るという野望をこの曲で実現させたのかもしれないですね。

 ポップ・ミュージックというのその時代その時代の様々な音楽のミクスチャーであったわけですが、そう考えると、これからの時代のポップは彼のようなアーティストが生み出していくのかもしれないな、と僕は思います。

 

 この曲のライブ・パフォーマンス。

 今までに見たことのないタイプのアーティストだというのがわかります。


Post Malone - "Circles" (Live on the Runaway Tour)

 

Circles

Circles

  • アーティスト:ポスト・マローン
  • 出版社/メーカー: Republic Records
  • 発売日: 2019/08/30
  • メディア: MP3 ダウンロード