まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ラヴ・アンド・マーシー(Love and Mercy)」ブライアン・ウィルソン(1988)

 おはようございます。

    今日はビーチ・ボーイズブライアン・ウィルソン。1988年に彼が初めてリリースしたソロ・アルバムからのファースト・シングルです。

 


Love and Mercy (Remastered)

 

I was sittin' in a crummy movie
With my hands on my chin
All the violence that occurs
Seems like we never win

Love and mercy, that's what you need tonight
So love and mercy to you and your friends tonight

I was lying in my room
And the news came on TV
A lotta people out there hurtin'
And it really scares me

Love and mercy, that's what you need tonight
Love and mercy to you and your friends tonight

I was standing in a bar
And watching all the people there
Oh, the loneliness in this world
Well it's just not fair

Hey, love and mercy, that's what we need tonight
So love and mercy to you and your friends tonight
Love and mercy, that's what you need tonight
Love and mercy tonight
Love and mercy tonight

 

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 ”僕は薄汚い映画館に座っていた 頬杖をついて

 スクリーンに映った暴力に対して 絶対に僕たちは勝てそうもない

 

  愛と慈悲 それが今夜君に必要なもの

     愛と慈悲   今夜君と君の友達へ

 

  部屋で横になりながら TVのニュースを見ていた

 たくさんの人たちが傷ついていて 僕は怖ろしくなる

 

  愛と慈悲 それが今夜君に必要なもの

     愛と慈悲   今夜君と君の友達へ

 

    僕はバーにいて そこにいる人たちを見つめている

 この世の孤独っていうのは まったくフェアじゃない

 

     愛と慈悲 それが今夜君に必要なもの

     愛と慈悲   今夜君と君の友達へ    "      (拙訳)

 

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 この曲を作るときに彼が思い浮かべた曲が、バート・バカラック&ハル・デヴィッドの作った「世界は愛を求めている」だったそうです。

 


Jackie DeShannon - What The World Needs Now Is Love

 

 ”今世界が求めているのは 愛、やさしい愛

 ただひとつの そしてほんの少ししかないもの

 今世界が求めているのは 愛、素敵な愛

 誰か、じゃなく 誰もに与えられる愛 ” (拙訳)

 

 この曲を思い浮かべながら、世界が求めているものについての歌を書こうとブライアンは思ったそうです。

 

 そして世界が求めているのは”愛”だけじゃなく、そこにMercy、”慈悲”を加えたところが、とても大事なんだと僕は思います。

 しかし、”Mercy”とうのは日本人にはダイレクトに伝わってこない言葉でもあります。

 慈悲はいつくしむこと、情け、と言う風に訳されています。

 Mercyは検索すると”誰かを許す優しさ”といった説明が見つかります。

 

 ブライアンはこう語っています。

” Mercy はLoveより深い言葉かもしれない。Loveはおだやかでやさしいものだし、Mercyはもっとギリギリのもので 人生の中で究極に切実に必要とされるものなんだと思う”

 

 この曲が発売されたとき、ブライアンはそれまで長い間精神的な病に苦しみ、闘病生活を送っていたことが知られていたので、ファンは歓喜しました。フィル・スペクター調のサウンドにブライアンらしいコーラスワークが調和した素晴らしい曲ですから。

 

 僕はその復活劇に感動するあまり(ブライアン本人は決して完全復活したわけではなかったようですが)、この曲のメッセージを深く受け止めることないままいたのですが、最近、この曲の”Mercy"という言葉が強く心に引っかかり始めました。

 

 ”Mercy”と”慈悲”は完全にイコールの言葉ではないと思いますが、どちらにしても、今の時代に人々が持つことが非常に困難なものになっているように思います。時代はどんどん、人々を直情的に過剰反応する方向に押しやっているからです。

 

 Mercyにつながるような、平静を保ちながら他人を思いやる想像力をちゃんと持てるか、僕自身が全く自信は持てないですが、でも、それなしでは世の中はどんどん過剰な方へと流れて行ってしまう気がします。

 

 誰もが認めるポップスの天才が、自分の作品の中で最も”スピリチュアルな曲”だと語っているこの「Love and Mercy」。世界中から今また見直してほしい曲だと僕は思います。

 

 

 

 

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