まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「BLUE BIRD」ランディ・エデルマン(1974)

 おはようございます。

 今日はランディ・エデルマンの「BLUE BIRD」。

ゴーストバスターズ2」「ベートーベン」「マスク」「あなたが寝てる間に,,,」「シャンハイ・ヌーン」「幸せになるための27のドレス」など80作以上のハリウッド映画の音楽を手がけている人ですが、ピアノ弾き語りのシンガーソングライターとしても活動していて、素晴らしい曲を残しています。


Randy Edelman l Bluebird

 

In our hearts
We all have our dreams
And in our minds
We all have our schemes

But no matter who you are
We all got our scars to live with

Look around and what do you find
Different faces, different minds
But no matter where you go
We're on the same plateau
We all wanna know

Where am I ever gonna find a bluebird
Where we ever gonna find some love
Cause everybody wants to find a bluebird
So go on and look up above

Friday's gone, nowhere to go
The weekend's coming
But you don't wanna know

Come on, get something on
All hope's not gone
Cause you might find it
(You might find it)
You know you might find it

You know you might find a bluebird
You know you might find some love
Cause everybody wants to find a bluebird
So go on and look up above

(Where am I ever gonna find a bluebird)
(Where we ever gonna find some love)

Everybody wants to find a bluebird
Everybody wants to find some love
Everybody wants to find a bluebird
So go on and look up above

Everybody wants to find a bluebird
Everybody wants to find some love

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  ”胸の中に 僕らはみんな夢を持っている

   頭の中には 僕らはみな計画していることがある

   だけど 誰であれ みな傷痕をかかえて生きている

   周りを見渡して 君は何を見つけたの?

   それぞれ違った顔に 違った思い

   でも、どこに行ってみても  僕らはみな上下なく同じ場所にいるんだ

 

  僕らはみんな知りたがっている

  どこに行ったら 青い鳥が見つかるのか 愛は見つかるのか

  みんな青い鳥を見つけたいから 前に進み そして 空を見上げる

 

  金曜日が過ぎても 行くところがない 

  週末が来たなんて 気づきたくないんだね

  でもさあ、何かやってみようよ

  希望が全部消えてしまったわけじゃない

  見つかるかもしれないんだから”   (拙訳)

 

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  ”青い鳥”はメーテルリンクの有名な童話、チルチルとミチルの兄妹が夢で”青い鳥”を探しに行く話ですね。ふたりは思い出の国や、未来の国などさまざまな場所を巡りますが、捕まえられず、目覚めてみると自分たちの飼っていたのが青い鳥だったという結論で、いつも”本当の幸せは自分の身近にあるんだ”という教訓とともに語られます。

 

 しかし、読み返してみると、そんなにすっきりとした教訓童話じゃないことに気づきます。

  兄妹が(夢の中で)青い鳥を探しに行ったのは、(隣人にそっくりな)仙女が娘の病気を治すのに必要だと依頼されたからです。しかし捕まえることができず、夢から覚めると、その隣人が家に来ていて彼女の娘が前から彼らの飼っている鳥を欲しがっていることを聞かされます。あらためて飼っているハトを見てみると、薄い青だったのが濃くなっているよいうに思えて、これがその青い鳥なんじゃないかと思うわけです。

 

 自分が飼っていたのが実は青い鳥だった!というような劇的なものじゃなく、”前より青さが濃くなった”程度、しかも、鳥はハトだったんですね。

 でも、娘の病気は奇跡のように回復します。

 そこまではハッピーエンドですが、それから、チルチルがその娘に餌の上げ方を教えようとハトを取り上げるのを娘が拒んで、両者の力が緩んだ隙に青い鳥は逃げてしまいます。

 そしてチルチルは観客にこう言うのです。

 (この童話は戯曲なので、観客に話しかけることが可能です)

 

 「皆さんの中の誰かがあの鳥を見つけたら、お願いだから僕たちに返してくれますか?僕たちが幸せでいるためには、後で必ず、あの鳥が必要になるんです」

 

 これをどう解釈するかはそれぞれだと思いますが、少なくとも幸福は、人の思い込みや欲望と付かず離れずの関係にあって、ちょっとした隙で簡単に人の手を離れてしまう、という苦いリアリティを感じてしまいします。

 ハッピーな教訓話では決してないんですね。

 

 さて、歌から大きく脱線してしまいましたが、ランディ・エデルマンの歌をもう一度聴き直すと、そういう”幸福の儚さ”を知りながらもどうしても追ってしまう人間、”幸福への期待”を目の前に掲げなくてはいられない人間、という苦みも含んだ上で、それでもなお優しく歌いかけてくるものだと気づきます。

 

 ”青い鳥””BLUE BIRD”を歌った曲は、実は洋楽はとても少ないんです。でも、日本はけっこうあります。日本人好みなんでしょうか。桜田淳子から浜崎あゆみいきものがかりコブクロなど。

 でも、どれもメーテルリンクの世界観とはけっこう遠いものです。”青い鳥”というさっくりしたイメージだけを借りて来ているものです。もちろん、それが悪いわけじゃないですが。

 

 ちなみにこの曲の弦アレンジはニック・デカロなのだそうです。やや控えめででもちょっと切ない感じはいかにも彼らしいと言えるでしょう。

 

 さて、最後はマニアックな情報で締めます(苦笑。

 この曲は当時シングルにもなっていて、その際タイトルは「EVERYBODY WANTS TO FIND A BLUEBIRD」になっていて、イントロをカットして尺の短いヴァージョンになっていますので、こちらもご紹介します。「夢の青い鳥」という邦題で日本でシングルも出ていたようです。

 


Randy Edelman / Bluebird sigle version

 

 

この「BLUE BIRD」を含むアルバム。間違いなく隠れた名盤だと思います。アル・クーパー、マイケル・オマーティアン、ウィルトン・フェルダー、ディーン・パークス、ゲイリー・コールマン、トム・スコット、ジョン・ガーリンら豪華なメンバーも参加。