まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ドライビング・フォー・クリスマス(Driving Home For Christmas)」クリス・レア(1988)

 おはようございます。

 今日はクリス・レアの「Driving Home For Christmas」です。

www.youtube.com

 

I'm driving home for Christmas
Oh, I can't wait to see those faces
I'm driving home for Christmas, yeah
Well, I'm moving down that line


And it's been so long
But I will be there
I sing this song
To pass the time away
Driving in my car

Driving home for Christmas
It's gonna take some time but I'll get there

Top to toe in tailbacks
Oh, I got red lights all around
But soon there'll be a freeway, yeah
Get my feet on holy ground


So I sing for you
Though you can't hear me
When I get through
And feel you near me
Driving in my car

 

I'm driving home for Christmas
Driving home for Christmas
With a thousand memories
I take look at the driver next to me

 

He's just the same
Just the same

 

Top to toe in tailbacks
Oh, I got red lights all around
I'm driving home for Christmas, yeah
Get my feet on holy ground

 

So I sing for you
Though you can't hear me
When I get through
Oh and feel you near me
Driving in my car

 

Driving home for Christmas
Driving home for Christmas
With a thousand memories
I take look at the driver next to me
He's just the same
He's driving home, driving home
Driving home for Christmas,,,

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クリスマスに車で家に向かっている
ああ、早くみんなの顔が見たい
クリスマスに車で家に向かっている
車の流れの中をゆく

   
かなり時間がかかっている
だけど、僕はたどりつく
この歌を歌うよ 時間をつぶすために
車を走らせながら

 

クリスマスに車で家に向かっている
時間はかかりそうだけど、たどりつくさ
渋滞の先頭から最後まで
あぁ、赤いライトばかりさ
でも、もうすぐフリーウェイ
聖なる地に足をおろすよ

 

だから君のために歌うよ
たとえそれが君には聞こえなくても
渋滞を乗りこえたら
君を近くに感じられる
車を走らせながら

 

クリスマスに車で家に向かっている
クリスマスに車で家に向かっている
数えきれない思い出とともに
隣の車のドライバーに目を向けると

彼も全く同じ 僕と全く一緒さ

 

渋滞の先頭から最後まで
あぁ、赤いライトばかりさ

クリスマスに車で家に向かっている
聖なる地に足をおろすよ

 

だから君のために歌うよ
たとえそれが君には聞こえなくても
渋滞を乗りこえたら
君を近くに感じられる
車を走らせながら

 

クリスマスに車で家に向かっている
クリスマスに車で家に向かっている
数えきれない思い出とともに
隣の車のドライバーに目を向けると 僕と全く一緒さ

 

クリスマスに車で家に向かっている、、、         (拙訳)

 

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「Driving Home For Christmas」楽譜はこちら

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 クリス・レアはイギリス出身、1951年生まれのベテラン・アーティストです。その長いキャリアを経て、今現在、彼の最も有名なレパートリーとなったのはこのクリスマス・ソングでした。

 昨日紹介したイギリスの国民人気ランキング番組「Nation's Favorite」のクリスマス・ソング特集では第12位、ポール・マッカートニー「ワンダフル・クリスマス・タイム」より上に堂々ランクされています。

 

 この曲が出来上がるまでには、いかにもクリスマスらしいストーリーがあるので紹介します。

 クリスがこの曲の着想を得たのは曲のリリースからさかのぼること10年前、1978年のクリスマス近い時期でした。

 この年、彼はメジャーデビューを果たしたのですが、成功しなかったため、レコード会社から契約を切られそうになっていて、マネージャーも辞めていってしまったそうです。

 彼はロンドンのアビーロードスタジオにいて、そこから家のあるミドルズブラまで帰らなくてはいけないのですが、レコード会社は交通費を出してくれず、彼はその時運転を禁止されていたため、奥さんが古いローバー・ミニで迎えに来てくれたそうです。

 ミドルズブラリバプールマンチェスターよりもっと北にあって、ロンドンから電車でも3時間半くらいかかるそうですから、相当な距離ですよね。

 しかも、冬なので途中雪が降りだして、しかも渋滞にハマってしまい、クリスはそのときの全財産だった3万円くらいのお金を道中ずっと手でいじりながら暗い気分になっていたようです。

 そしてふと隣の車の運転手たちを見わたしてみると、みんな自分のように惨めに見えたそうです。そして、冗談交じりに思い付いたフレーズが、

 ”We’re driving home for Christmas”  

 でした。

 そして、街燈が車中に差し込んで明るくなるタイミングをはかって、歌詞を書き留めていったそうです。

 家に着いた時にはもう明け方近くなっていて、ドアマットには雪がつもり、家の中は冷え切っていたそうですが、一通の手紙が届いているのに気づきます。

 それは彼のデビュー曲のアメリカでの印税の小切手でした。

   しかも、それが家が買えるほどの金額だったそうです。

 本国イギリスでは彼の思うようにはうまくいかなかったのですが、実はアメリカでは売れていたんですね。

 それが「Fool」という曲です(1978年 全米12位)。


Chris Rea - Fool If You Think Its Over (Official Music Video)

 

 道中で書いたクリスマスの歌詞は、彼の未完成の作品を入れておく缶の中に入れたままだったそうですが、

 数年後、友人のキーボーディストと二人で新しいピアノの試し弾きをしながら、ふざけてカウント・ベイシー調の曲にナット・キング・コールの真似をして歌っていると、誰かががすごくいいから曲に仕上げたほうがいいよ、と言ったらしく

    彼は缶の中から合う歌詞を探していると「Driving Home For Christmas」がそれにぴったりハマったんだそうです。

   彼のレパートリーとしては異色の明るい曲調になったのは、そういう経緯があったからなんですね。

 ただ、彼にはクリスマス・ヒットを作るという意図は全くなかったそうで、最初はシングルのB面としてひっそりとリリースしたそうですが、ラジオのDJがオンエアをしはじめて、じわじわと広がっていきました。

 

   クリスマスの日に車で家路を急ぐという、ありふれてはいるけれどほとんど歌にされてこなかった風景に焦点を合わせ、それにぴったりな曲になったことが良かったんでしょうね。

    

    そういう意味では、はじめに紹介した公式MVより、一般の人が作ったと思われるこの映像の方が曲のムードに良く合っている気がします。

 


Chris Rea ~ Driving Home For Christmas (1986)

 

 その後、彼はイギリスでは多くのヒット曲を生み出しますが、日本で最も有名なのはCMにも使われた「On The Beach」でしょう。

 日本でCMで使われた1986年のオリジナルと、イギリスで1989年にヒットした、テンポがぐっとアップした再レコーディングのヴァージョン、せっかくなので両方を、最後に。

www.youtube.com

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