まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ルビー・チューズデイ(Ruby Tuesday)」ザ・ローリング・ストーンズ(1967)

 おはようございます。

 今日はなんと、ローリング・ストーンズです、、。

 彼らをポップスとして語るのはかなり無理があるとは重々承知しているのですが、このブログで大注目している”1967年”のヒット曲をおさらいしている中で、すごく気になる曲があって、それが「ルビー・チューズデイ」でした。

 彼らの数多のヒット曲の中でもこの「ルビー・チューズデイ」はちょっと肌触りが違うように思えます。

   


The Rolling Stones - Ruby Tuesday (Official Lyric Video)

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She would never say where she came from
Yesterday don't matter if it's gone
While the sun is bright
Or in the darkest night
No one knows
She comes and goes


Goodbye, Ruby Tuesday
Who could hang a name on you?
When you change with every new day
Still I'm going to miss you


Don't question why she needs to be so free
She'll tell you it's the only way to be
She just can't be chained
To a life where nothing's gained
And nothing's lost
At such a cost


Goodbye, Ruby Tuesday
Who could hang a name on you?
When you change with every new day
Still I'm going to miss you


"There's no time to lose," I heard her say
"Catch your dreams before they slip away
Dying all the time
Lose your dreams and you
Will lose your mind
Ain't life unkind?"


Goodbye, Ruby Tuesday
Who could hang a name on you?
When you change with every new day
Still I'm going to miss you

Goodbye, Ruby Tuesday
Who could hang a name on you?
When you change with every new day
Still I'm going to miss you

 

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彼女はどこから来たのかなんて絶対言わないさ
昨日なんて過ぎてしまえば意味はない
太陽が明るいうちに
それとも、一番暗い夜に
誰も知らないのさ
彼女が現れ去っていくのを


さよなら、ルビー・チューズデイ
誰がきみに名前をつけられる?
きみは日ごとに新しく変わってゆくけど
僕はずっと君を恋しく思うだろう


彼女はなぜそんなに自由でなきゃいけないかなんて訊いていけない
それしかないと言うだけさ
ただ彼女を鎖でしばることができないのさ
何も得られない人生には
そして、そんな代償を払っても
失うものなんてないのさ


さよなら、ルビー・チューズデイ
誰がきみに名前をつけられる?
きみは日ごとに新しく変わってゆくけど
僕はずっと君を恋しく思うだろう

失う時間なんてない、彼女はそう言った
"夢がすりぬけてゆく前に捕まえるのよ
いつも死んだみたいにしていたら
夢を失うの、そうすれば心まで失う
人生って不親切じゃない?"


さよなら、ルビー・チューズデイ
誰がきみに名前をつけられる?
きみは日ごとに新しく変わってゆくけど
僕はずっと君を恋しく思うだろう

 

さよなら、ルビー・チューズデイ
誰がきみに名前をつけられる?
きみは日ごとに新しく変わってゆくけど
僕はずっと君を恋しく思うだろう

            (拙訳)

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   海外のWikipediaを見ると、この曲のジャンルは”バロック・ポップ”となっています。

バロック・ポップ”とは、クラシックで使われる楽器(ハープシコード、フレンチホルン、オーボエ弦楽四重奏など)を取り入れたポップスのことで、ビートルズの「エリナー・リグビー」ビーチ・ボーイズの「神のみぞ知る(God Only Knows)」もそうジャンル分けされています。

 

 ジャンル分けなど、今の時代には無意味だというのも重々承知していますが、彼らの曲で”バロック・ポップ”とジャンル分けされているものがあることには注目してもいいのではないでしょうか?

 

 この曲を書いたのは、クレジットはミック・ジャガーキース・リチャーズの連名ですがキース一人で書いた、もしくはブライアン・ジョーンズの協力があった、もしくはきっかけとなるメロディはブライアンが書いていた、など諸説あるようです。

 

 この曲はジミ・ヘンドリックスに奪われたガール・フレンドのリンダ・キーズをイメージして作ったそうなので、基本的にはほぼキースの曲だと考えていいと思いますが、ピアノやリコーダー、フルートをブライアンが演奏していることもあって、この曲の全体のトーンを形作る上で、彼の存在意義はとても大きかったのではないか、と僕は推察しています。

 

 そして、多分、世界でただ一人僕だけが、1967年を”ポップスの大当たり年”としてこのブログで騒いでいますが、ロック史的には、”サイケデリック・ロックのピークの年”と言われています。

 

 サイケデリック・ロックとはドラッグの幻覚を表現するようなロックで、サウンド的にはインドの楽器や、歪んだギター、過剰なサウンド・エフェクト、テープの逆回し、フリー・ジャズのような長い即興演奏、テルミンなどの電子楽器などを使ってそれを表現しようとしました。

 サイケデリック・ロックの代表作と呼ばれるものは、ほぼ1967年と1968年の2年間にリリースされています。

 その中にはジミ・ヘンやドアーズなどロックもあれば、ミレニウム、サジタリアスなどのポップ・グループも含まれています。

 大きなサウンドの傾向の中で、ロックとポップが混じり合った時期でもあったわけですね。

 

 先ほど、述べたバロック・ポップとも親戚のような(?)関係で、1966年にビートルズが発表したアルバム「リボルバー」はサイケとバロック両方含まれていて、シーンの大きな起爆剤となりました。

   シンプルでソリッドな、ブルース、R&B、R&Rをやっていたストーンズも、その影響を受け、対抗していきます。

 その中で、サイケデリック・ロックバロック・ポップのような”ロックで使わなかった楽器”をストーンズの中で主に演奏したのが、ブライアン・ジョーンズでした。

 

 ストーンズの曲で「ルビー・チューズデイ」同様に、バロック・ポップ、もしくはサイケデリック・ロック(ポップ)に分類されているものに、「レディ・ジェーン」と「ダンデライオン」があり、「レディ・ジェーン」ではブライアンはダルシマー、「ダンデライオン」ではオーボエとサックスを演奏し、サウンド的に重要な役回りを果たしています。

 

「レディ・ジェーン(Lady Jane)」

www.youtube.com

 1969年には彼は亡くなってしまいますので、そう考えると”サイケデリック・ロック時代のブライアン・ジョーンズ”が、ローリング・ストーンズをポップとクロスオーバーさせる大きな要因になったのではないかと、僕は思っています。

 

”さよならルビー・チューズデイ 日ごとに生まれ変わってゆく君に

 誰が名前なんてつけられるだろう それでも僕は君を恋しく思うだろうな”

 

 誰も束縛することのできない女性、「ティファニーで朝食を」のホリー・ゴライトリーもそうですが、そういう自由に気ままに生きる女性をテーマにした歌は、魅力的なテーマだと思います。ロマンティックです。

 ストーンズの曲の歌詞はほぼミック・ジャガーが書いていますが、この曲はキースの歌詞だということも大事なポイントかもしれません。

 

「リンダ・キースがそこにいないことについて書かれたんだろうね(笑)。わからないけど、彼女はどこかに行ってしまったんだ。とても悲しいことだった、まさに、ルビー・チューズデーで、それは火曜日のことだったんだ」

           (『According to the Rolling Stones』)

 

 このうたのチューズデイは彼女の名前ですが、”火曜日”というのにも意味があったんですね。

 

 それから、少しトーンの似ている「レディ・ジェーン」とこの「ルビー・チューズデイ」を聴き比べると、「レディ・ジェーン」の方がストーンズっぽい気がして、「ルビー・チューズデイ」にはやはりブライアンの考えたメロディ、もしくはコード進行が間違いなく入っているんじゃないかと、僕は思ってしまいます。

 

 「ルビー・チューズデイ」とともに、ストーンズの中で僕が最も”ポップス”、”バロック・ポップ”とクロスオーヴァーしていると思う曲「ダンデライオン」。これも1967年産!

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