おはようございます。
今日はOKAMOTO'Sの「虹」です。
パンクのパイオニア的存在のラモーンズはメンバー全員、名字をラモーンと名乗っていました。ラモーンズ好きだったメンバーは、岡本太郎好きでもあるので、全員オカモト姓を名乗ることにして、OKAMOTO'Sになったそうです。
ラモーンズ好きということで、彼らは元々はガレージ・ロック・バンドでしたが、だんだんとヒップホップやR&Bなどの要素も取り入れ音楽性を広げていき、カテゴライズできない独自のスタイルを築き上げていきます。
そんな彼らが大瀧詠一の「君は天然色」にオマージュをささげた曲がこの「虹」で、2014年に発売された彼らの5枚目のオリジナルアルバム『Let It V』(レット・イット・ヴィー)に収録されていました。
ラモーンズにはフィル・スペクターがプロデュースした作品がありますから(スペクターはただでもエキセントリックな上に、この頃は常に酔っ払っていてやばかったらしく、無茶苦茶なレコーディング現場だったと語り草になっています)、彼らが日本のフィル・スペクター、大瀧詠一に注目したことも納得できます。
ただ彼らの場合は、もともと純粋に大瀧詠一が好きで突っ込んで聴いていたようです(ダウンタウンの浜田雅功の息子のハマ・オカモトは子供の頃、両親の車で「ロングバケーション」がかかっていたのを記憶しているそうです)。
彼らの大瀧詠一観も興味深い
オカモト・ショウ
「ソロになってからの大滝さんは、洋楽の歴史と日本の歌謡曲の歴史をすべてわかったうえで、それをガッツリ組み合わせた。それで、日本人にとって異次元のサウンドだった洋楽を、音楽マニアじゃない人にまで当たり前に「いいよね」って思えるものにしてしまったところがすごいと思います」
「そもそも大滝さんは、日本のポップスの創造主みたいな方ですからね。「オタク」という言葉は80年代に生まれたそうですが、大滝さんは正真正銘の「オタク」なんだと思います。例えば細野晴臣さんみたいに、外に向けて開けていった人もいっぱいいたわけじゃないですか。でも、大滝さんのようなある意味ずっと「閉じたままでいる」って、逆にカッコいいなと思います。」
(「SOUND DESIGNER」2014年3月号)
大瀧詠一のようにスタジオにミュージシャン20人も集める大掛かりなレコーディングは、今の業界では予算的にも実現は難しいですが、その分機材が格段に進歩したので、オーバーダビング(楽器をどんどん重ねて録音していくこと)によって音を分厚くしていくことが可能になったようです。
また、メンバーは「君は天然色」の各パートの演奏をあらためて研究したようです。
「おそらく、大瀧さんはすごくクリアなサウンドを目指していたと思いますが、僕らは音がグチャっとしていて、なんだかワケのわからないパーティ感みたいなものが出せたらいいなと思っていました。」
(オカモトショウ「SOUND DESIGNER」2014年3月号)
オカモトショウは本家のフィル・スペクターも好きだったそうですが、彼らは大瀧詠一を目指しながらも、着地は”音がグチャとした”(いろんな音が混ざって聴き分けられない)フィル・スペクターのほうに近づいたわけですから、面白いものです。ぐるっとまわって原点に戻ったというか。クリアで高音質なものじゃなく、グチャっとしたローファイっぽい仕上がりのほうが、今の若いミュージシャンにはピンと来るのかもしれません。
ィル・スペクター・サウンドは21世紀にはもうフィットしないんじゃないかと正直僕は思っていましたが、彼らのようなアプローチならアリだな、と教えてもらった気がします。
そして、結果的に「虹」に一番雰囲気が近いのは大瀧でもフィル・スペクターでもなく、ウィザードのこの曲のように僕は感じました。