まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「独房44( Care Of Cell 44)」ゾンビーズ(1968)

 おはようございます。

 今日はゾンビーズの「独房44( Care Of Cell 44)」です。


The Zombies - Care Of Cell 44 (Lyric Video)

 

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Good morning to you, I hope you're feeling better baby
Thinking of me while you are far away
Counting the days until they set you free again
Writing this letter, hoping you're okay
Sent to the room you used to stay in every Sunday
The one that is warmed by sunshine everyday
And we'll get to know each other for a second time
And then you can tell me about your prison stay

Feels so good you're coming home soon

Its gonna be good to have you back again with me
Watching the laughter play around your eyes
Come up and fetch you, saved up for the train fare money
Kiss and make-up and it will be so nice

Feels so good you're coming home soon

Walking the way we used to walk
And it could be so nice
We're talking the way we used to talk
And it could be so nice

Its gonna be nice to have you back again with me
Watching the laughter play around your eyes
Come up and fetch you, saved up for the train fare money
Kiss and make-up and it will be so nice

Feels so good you're coming home soon

Feels so good you're coming home soon

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おはよう  君の気分が良くなっていると願うよ、ベイビー

離れている間も僕のことを思ってくれてたらいいな

君がまた自由になれる日を数えながら

この手紙を書きながら、君の無事を祈っているんだ

毎週日曜に君が使っていた部屋もそのままにしてあるよ

毎日お日様が温めてくれているよ

もう一度おたがいのことをわかりあえば

君も刑務所にいた時のことを話せるよね

もうすぐ君が帰ってくるなんて最高の気分さ

 

君がまた僕のところに戻ってきたらいいだろうなあ

笑いが君の目をいたずらっぽくするのを見つめながら

君を迎えに行くよ、電車賃は貯めておいたんだ

キスして仲直り、なんて素敵なんだろう

 

もうすぐ君が帰ってくるなんて最高の気分さ

二人がいつも歩いた道を歩くのは

すごく素敵だろうな

二人がいつものようにおしゃべりするのは

すごく素敵だろうな

君がまた僕のところに戻ってきたらいいだろうなあ

笑いが君の目をいたずらっぽくするのを見つめながら

君を迎えに行くよ、電車賃は貯めておいたんだ

キスして仲直り、なんて素敵なんだろう


もうすぐ君が帰ってくるなんて最高の気分さ

もうすぐ君が帰ってくるなんて最高の気分さ

                       (拙訳)

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 それにしてもゾンビーズ、バンド名にゾンビとは思い切ったなあ、と思いますが、バンドが結成れた1962年当時はゾンビって言葉はそんなに広く知られていなかったようです。

 

 ”ゾンビ”は1930年代からホラー映画のタイトルにもなっていたようですが、ジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)が現代のゾンビものの雛形と言われ、1978年の映画「ゾンビ」から日本でも、ゾンビ、ゾンビって言い始めたように記憶しています。ただ、この映画の原題は「Dawn of the Dead 」なので、ソンビって邦題をつけた映画関係者が、日本でのゾンビを広めた張本人なのかもしれません。

 

 と話は脱線してしまいましたが、このバンド名を考えたのは当時のベーシスト、ポール・アーノルドで、バンドのリーダー、ロッド・アージェントはゾンビってなんとなく知ってたレベルで、ボーカルのコリン・ブランストーンに至っては何のことかも知らなかったそうです。ポールは医者になるためにすぐにバンドをやめてしまったのですが、インパクトの強い名前を残すという大きな役割を果たしたわけです。

 

  彼らは1964年のデビュー曲「シーズ・ノット・ゼア」が全英12位、全米2位といきなり成功を収めます。

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  翌1965年のシングル「テル・ハー・ノー」も全英42位、全米6位とヒットしました。

 ゾンビーズはイギリスのハートフォードシャー州セント・オールバンズで結成されたバンドですが、本国イギリスよりアメリカで人気があったんですね。

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  そして、1968年に彼らが英CBSに移籍して作ったのが「オデッセイ&オラクル」でした。

 当時はビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の衝撃が大きく、彼らもそういうコンセプト・アルバム的な作品を作ろうとしたのでしょう、基本同じアビーロード・スタジオの録音機材を使いました。

 ただ、予算がなかったので、あらかじめリハーサルを入念に行い、レコーディングの時間が短くすむようにしたらしいですが。

 しかし、レコーディング中にメンバー間の関係が悪くなり、アルバムも大コケしてしまったことがトドメとなって、ゾンビーズは解散してしまいます。

 なかなかいわくつきのアルバムなんですね。

 

 そのアルバムのオープニングを飾っていたのが「独房44(Care Of Cell 44)」でした。

 

 タイトルの”Care Of” は手紙の宛名につける、日本でいう「〜気付」「〜方」に当たる言葉。そして、Cell44とは刑務所の第44番独房を意味していて、直訳すれば「第44番独房気付」、刑務所に入っている彼女に向けて書いた手紙の文面を歌にしているのです。釈放される日を待ちわびているわけです。

 ”毎週日曜日に使っていた部屋は、今も君のためにとってあるよ”なんてフレーズもあります。

 ちなみに、レコーディング中はまんま「Prison Song(刑務所の歌)」というタイトルで作業していたそうです。

 

 曲の設定が突飛すぎたせいでしょうか、メンバーは絶対にヒットすると思っていたのにもかかわらず、イギリスでもアメリカでもチャートの下のほうにすらのらないという惨憺たる結果に終わってしまいました。

 

 しかし、それから年月が経って、「オデッセイ&オラクル」はポップスの名盤の地位を確立し(ローリングストーン誌の史上最高のアルバム500で100位)、僕もその評判を知ってアルバムを買いました。そして、1曲目のこの「Care Of Cell 44」でいきなり、心を"がしっと"つかまれたわけです。

 

 その後この曲をカバーするアーティストが次々現れたり、新しくPVが作られたりしました。

 僕の個人的な感想ですが、いいポップスというのは、わかりやすく親しみやすいのにアレンジとかコーラスとか、制作にすごく手間がかけられているものだと思っています。聴き手には見えない(聴こえない)ようなところまで、細かくこだわっているのです。

 これはひとつの価値観、美意識として僕にはすごく共感できるものです。

 例えば、人と人とのコミュニケーションでも、頭の中ではすごく考えて考えて、でも、アウトプットするときはなんとか相手にわかりやすい形にして伝える、というのが大事だな、とはいつも思います。ここまで考えたんだぞ、ということまでは直接相手に伝わらなくてもいい。むずかしいことではありますが。

 

 最後は名盤「オデッセイ&オラクル」からもう1曲。2017年に日本でゼクシィのTVCMで使われた「今日からスタート(This Will Be Our Year)」

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Odessey & Oracle

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