まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「イッツ・レイニング・アゲイン(It's Raining Again)」スーパートランプ(1982)

 おはようございます。

 今日はスーパートランプの「イッツ・レイニング・アゲイン」です。

 
Supertramp - It's Raining Again

Oh, it's raining again
Oh no, my love's at an end
Oh no, it's raining again
And you know it's hard to pretend


Oh no, it's raining again
Too bad I'm losing a friend
Oh no, it's raining again
Oh, will my heart ever mend?


You're old enough some people say
To read the signs and walk away
It's only time that heals the pain
And makes the sun come out again


It's raining again
Oh no, my love's at an end
Oh no, it's raining again
Too bad I'm losing a friend


Come on, you little fighter
No need to get uptighter
Come on, you little fighter
And get back up again


It's raining again
Oh no, my love's at an end
Oh no, it's raining again
Too bad I'm losing a friend


Come on, you little fighter
No need to get uptighter
Come on, you little fighter
And get back up again
Oh, get back up again
Oh, fill your heart again


〜It's raining, it's pouring
The old man is snoring
He went to bed, and bumped his head
And he couldn't get up in the morning〜

 

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ああ、また雨だ
いやだ、僕の愛は終わりだ
まいったな、また雨が降ってきた
平気なフリするのはキツい

 

ああ、また雨が降ってきた
なんてこった、友だちを失くしてそうさ
まいったな、また雨が降ってきた
ああ、僕の心は癒されるのだろうか?


誰かが言うんだ、
お前も察知して逃げることができる
くらいの年齢になったんだからって
時間だけさ、この痛みを癒せるのも
太陽にまた顔を出させることも


また雨が降ってきた
いやだ、僕の恋はもう終わりだ
まいったな、また雨が降ってきた
なんてこった、友だちを失くしそうさ

 

さあ、おまえは小さな戦士
気張らなくたっていい
さあ、おまえは小さな戦士
そしてまた立ち上がれ


また雨が降ってきた
いやだ、僕の恋はもう終わりだ
ああ、また雨なんて
なんてこった、友だちを失いそうさ


さあ、おまえは小さな戦士
緊張する必要はない
さあ、小さな戦士よ
もう一度立ち上がるんだ
ああ、また立ち上がれ
もう一度心を満たせ


〜雨降り、土砂降り
じいさんはいびきをかいている
ベッドに入って、頭をぶつけて
朝になっても起きれない〜         (拙訳)

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 梅雨がいよいよ本格的になってきたので、

 ”また雨かよ〜” と連呼しているこの曲を選曲してみました。

 しかも、”恋が終わっちゃったよ〜、平気なフリなんかできないよ〜、友達も無くしそうだよ〜”とひたすら、弱気に愚痴っています。

 でも、曲はすごくポップ、というのがミソですね。

 雨続きで鬱々した気分で、ツイてなくて、しかも恋も友情も終わりそうな時に、カラ元気なんて出せるわけがないですよね。無理やりポジティヴな音楽を聴いても大きな効き目は望めません。

 そういう時は、もう開き直って、愚痴れるだけ愚痴ってもいいと思います。

 ただ、重たいトーンにならない、怒りに任せるままにはしない、のは大事かもしれないですね。ちょと軽快なテンポで(?)愚痴りましょう。

 

 というわけでこの曲、弱気な愚痴をポップに歌う、というなかなかレアなものです。 そして、その間に、ちょっとした勇気で立ち直れるさ、という楽観的なフレーズを挟みこんでくるわけで、なかなかバランスが絶妙だなあ、と思います。

 

 ちなみに曲の終わりに子供たちが歌っているのはマザーグース(イギリスの童謡)の「It's Raining, It's Pouring」の一節です。

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 マザーグースを引用したポップ・ソングには、「サイモン・セッズ」(1910フルーツガム・カンパニー)、「ジョージー・ポージー」(TOTO)、「レディ・マドンナ」(ビートルズ)、「ジャック・アンド・ジル」(レイ・パーカー・ジュニア)なんかがあります。

 

 さてスーパートランプはイギリス出身のロック・バンドで、古い洋楽ファンは「ブレックファスト・イン・アメリカ」というアルバムが世界的に大ヒットをしたことを覚えているでしょう。タイトル曲は日本でTVCMにも使われ有名になりました。

 

 爆風スランプを結成する前にサンプラザ中野パッパラー河合は「スーパースランプ」(中野脱退後はデーモン小暮が2代目ボーカルだったそう)というバンドを組んでいたそうで、もちろんスーパートランプをもじったものですから、当時は日本でも有名なバンドでした。

 

 僕は当時、スーパー・トランプは<ものすごいトランプ>(意味不明ですが)だと思い込んでいましたが、カードのトランプはTRUMPで、こちらはTRAMPなんですね。

 TRAMPは漂流者、流れ者、なんて意味があってW.H.デイヴィスという人が書いた小説「The Autobiography Of Supertramp」から取られたそうです。

 

 1970年にレコード・デビュー、当初はプログレッシヴ・ロックとカテゴライズされるスタイルでした。

 そして1974年のアルバム「クライム・オブ・ザ・センチュリー」(全英4位)とシングル「ドリーマー」(全英13位)がヒットします

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 そして彼らが世界的に大ブレイクしたのが1979年のアルバム「ブレックファスト・イン・アメリカ」でした。

 

「ロジカル・ソング」(全米6位、全英7位)

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日本で大ヒットしたのはこちら「ブレックファスト・イン・アメリカ」。

日立のオーディオのTVCMでこの曲が使われていました。

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 この次にリリースされたオリジナル・アルバムが「フェイマス・ラスト・ワーズ」(1982)で、ファーストシングルがこの「イッツ・レイニング・アゲイン(It's Raining Again)」(全米11位)でした。

 

 彼らのブレイクのきっかけになったのがメンバーのロジャー・ホジソンでした。元々、彼とリック・デイヴィスの二人が中心になって曲を書きメイン・ボーカルを分担していましたが、ホジソンが書いてボーカルをとったポップな曲ばかりがヒットするようになったのです。

 

 イエスジェネシスやムーディーブルース、カンサス、スティクスなど、プログレとジャンル分けされていたバンドがポップ路線に変更して大ヒットを飛ばしたのが1970年代後半から80年代前半のロックシーンの大きな特徴でもありました。

 

 そして、プログレはある意味”演奏”が主役の音楽ですので、バンド・メンバーのバランスが保たれていたわけですが、ポップ路線というのは、ポップな曲を書けるメンバーやボーカルばかりにスポットライトが当たってしまう結果になってしまうので、必然的にバンドのバランスが崩れてしまう、という末路を辿ることが多かったのです。

 商業的成功の代償とでもいうべきなのでしょうか。

 

 スーパートランプもしかりで、ホジソンは「フェイマス・ラスト・ワーズ」を最後にグループを脱退してしまいます。

 

 スーパートランプ=ホジソンのポップな曲と甲高い歌声、という印象があまりに強くなってしまったせいで、バンドは活動を継続しますが目に見えて失速してしまいました。

 

 ホジソンは脱退後すぐにソロ活動を始めそこそこのヒットになりますが、その後はそれほど活発には活動していませんが、21世紀に入ってからはスーパートランプ大ヒットしたレパートリーを引っ提げて、ツアーを行っているようです。

 

 2010年のウィーンでのライヴ映像がありましたので、最後はそちらをご覧になってみてください。

 

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