まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「DISCO YES」トム・ミッシュ(2018)

 おはようございます。

 今日はトム・ミッシュ。「Disco Yes」です。


Tom Misch - Disco Yes (feat. Poppy Ajudha) [Audio]

 

I want to stay
But I need to go
I want to be the best for you
But I just don’t know what to do
'Cause baby, yes I've cried for you
The time we have spent together
Riding through this English weather
And as the pressure builds
So does the tension between you and me
Time has gone so fast
Watching the leaves fall from our tree

 

Baby, I just want you to know
I still love you
Love you
Love you
Love you
Love you
Love you


And the grass is always greener
On the other side
Maybe you should come and take a trip sometime
Oh you seem keener
When they turn to night
But you trippin out your mind
Baby, tell me it's a sign
As the pressure builds
So does the tension between you and me
Time has gone so fast
Watching the leaves fall from our tree


Baby, I just want you to know
I still love you
Love you
Love you
Love you

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君といたい
だけど、行かなくちゃ
君にとって一番の存在でありたい
でも、どうしたらいいのかわからない
だからベイビー, そうさ君を想って泣いていたのさ
一緒に過ごしてきた時間
このイギリスの気候の中を走り抜けて
そして、プレッシャーが高まると
君と僕との間の緊張も高まって
時はあっという間に去っていった
木から落ちる葉を見てるうちに

 

ベイビー、ただ君にわかって欲しいのさ
今も愛してるってこと
愛してる、、、

 

そして、となりの芝生はいつだって青いんだ
僕と旅行に行ったほうがいいかもね、いつか
ああ、君は夜になるとずっと鋭敏になるみたい
だけど、君は心をハイにして
ベイビー、それはサインだと言ってくれ
そして、プレッシャーが高まると
君と僕との間の緊張も高まって
時はあっという間に去っていった
木から落ちる葉を見てるうちに


ベイビー、ただ君にわかって欲しいのさ
今も愛してるってこと
愛してる、、、                   (拙訳)

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 僕はまさに”ディスコと言えば「サタデーナイト・フィーバー」”という世代なんですが、さすがに何十年もたつと、ディスコのファッションや風俗的な部分は消え去ってしまったなあとしみじみしてしまいます。しかし、音楽としての「仕組み」としてのディスコ・ミュージックは普遍的な魅力があるようで、その<音楽的な骨格>に新しい人たちが新たな解釈を加えた作品をリリースし続けていて、興味深く聴いています。

 

 そんな新時代の”ディスコものの中で個人的によかったのがこれ。もう、サタデーナイトじゃなくて、リラックスした土曜の日中のほうがぴったりな感じがしますよね。

 宅録から生み出された、ダンスフロアを前提としていないディスコ、という感じがします。サウンド的にも余計な装飾や演出がなくて、あくまでも自然体。こういうのが今の時代の空気感なんだろうなあ、などと思ってしまいました。

 

 さて、この曲を作ったトム・ミッシュは1995年生まれのイギリス、ロンドン出身のギタリスト、シンガー・ソングライター、トラック・メイカー、プロデューサーです。

 父が精神科医、母がグラフィック・デザイナーという彼は、クリエイティビティを奨励する家庭で育ち、父親がバイオリンを弾いていたことから、幼い頃からスズキ・メソードでバイオリンを学んでいたそうです。

 

 10代にかけてはロック(特にレッチリジョン・メイヤー)を聴いていたそうですが、16~18歳の頃ヒップホップに出会い、特にJディラの作品に影響を受けるようになり自分でビートを作り始め、2012年にはトラックをネットに公開し始めました。

 若いラッパーたちは彼のビートを自分の作品にサンプリングし始めたそうで、彼は地元のシンガーソングライター、Carmody(カーモディ)ともコラボレーションし、最終的には2014年に彼女と『Out to Sea EP』をリリースした。同じ年、インストゥルメンタル・トラックを集めた『Beat Tape 1』を発表することになります。

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 まず、彼はトラック・メイカーとして世に出たわけですね。

 

 翌2015年には『Beat Tape 2』をリリース、こちらはCarmody、ジョーダン・ラカイなど様々なボーカリスト、ラッパーとのコラボレーションを収録していました。

 2016年のEP『Reverie』では、ポップなR&B調のスタイルになり、いくつかのトラックで自ら歌うようになります。

 

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   そして、2017年には彼の代表曲の一つであるシングル「South of the River」をリリースします。ギターのカッティングは、完全にナイル・ロジャース風ですね。

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 この辺りで彼の才能が一気に爆発したのか、、翌2018年には「Movie」、デ・ラ・ソウルをフィーチャーした「It Runs Through Me」、ゴールド・リンクをフィーチャーした  「Lost in Paris」と、素晴らしいシングルを連発します。

 

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「South of the River」からのシングルを収録したデビュー・アルバム『Geography』は全英8位、全米ジャズ・チャート2位と一気にブレイクし、彼の名は一躍有名になり、日本のフジロックにも参加しています(来日時は星野源と対談したり、松重豊のラジオ番組(「深夜の音楽食堂」)に出演したりしていたようです)。

 

 そして、この『Geography』に収録されていたのが、この「Disco Yes」です。村上春樹も自身のラジオ番組で紹介していました。僕もそうですが、リアルなディスコ・ブームを知る世代にも楽しめる感覚がこの曲にはあるんでしょうね。

 

 追記:2022年に彼は、エレクトリック・ダンス・ミュージックに特化したプロジェクト”Supershy”を作り、「Happy Music」という曲で再びディスコに取り組んでいます。「DISCO YES」に比べ、グッとオマージュ感が強い感じがしますが。

 

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Geography

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